慶応大学菊澤ゼミナールHP

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3)学者様の不思議な世界

2016年6月 4日 (土)

偉大な学者の論文の効用

  経営学という学問は、現実的でドロドロし複雑な学問なので、ときに疲れてしまうときがある。こういったとき、私は哲学者の論文を読むことにしている。心が洗われる。

 

「哲学者がおこなうことがらの一つで、しかも彼の最高の業績のうちに位することがらの一つは、それまで誰も気づかなった謎、問題、パラドックスに気づくことである。このことは、その謎を解くよりもはるかに偉大な業績である。」By ポパー

 

  ここから、ポパーは自然科学の謎を発見したカントの話へと進む。

 

 a=bが真であるとき、a=ba=aから区別すことは不可能であるように思える」Byフレーゲ

 

   これは、カントの分析命題と総合命題の区別へのフレーゲの挑戦である。フレーゲは、意味は同じだが、意義は異なるという形で議論を進める。

 

  この数学者フレーゲの話をもう少し詳しくいうと、以下のような疑問をフレーゲは持っているようです。

(1)a,b,cをそれぞれ三角形の各頂点とその対辺の中点とを結ぶ線分であるとする。

(2)さらに、aとbの交点をAとし、 bとcの交点をBとする。

このとき、A=A、A=Bが成り立つ。

二つは区別できるか?

カントは、A=Aを先験的に正しい分析命題とし、A=Bは経験的テストが必要な総合命題だとして区別しました。

菊澤 研宗: 組織の経済学入門 改訂版

菊澤 研宗: 組織の経済学入門 改訂版

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2015年7月 3日 (金)

どうしようもない日本企業

 昨年の8月以降、インターンシップなどの経験を経て、セミナー参加、そして、現在、大学4年生が就活に忙しい。ほとんど、大学で、まともな勉強ができない。いつまで続くのか?

  と思っていたら、今度、もう3年生が企業のインターンシップにいくと言い出している。まだ、7月、しかも前期の試験前だ。そして、来年まで就活を行うのだろう。

 こんなことをしていたら、大学の専門教育は崩壊する。企業も、こんなことに、社員の労働を投入する余裕があれば、もっと別のところに労働を投入できるだろう。まったく、非効率的である。

 こんなことを日本企業はいつまで続けるのか。外国に行って、優秀な外国人をどんどん雇用すればいいのだ。

 日本企業は、非効率きわまりない。

 

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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2015年6月10日 (水)

ブラックサンダー、理論負荷性、そして帰納法

  K.R.Popperによると、われわれの認識は理論依存的だという(理論負荷性のテーゼ)。つまり、われわれの認識は、観点や理論に依存しているということ。したがって、われわれは理論的に知っていることしか見えないのだ。

 このことを体験してしまった。それは、「ブラックサンダー」というお菓子だ。私は、2週間前までその存在を知らなかった。ゼミの学生の報告ではじめてその存在を知った。

 すると、その存在が見えてきたのだ。

 これまで、まったく見えなかったブラックサンダーが、いつもいっているコンビニのレジの横にあることに気づいた。いや、見えた。多分、これまでもそこに置いてあったはずだ。しかし、まったく見えなかったし、その存在も感じなかった。

 やはり人間は知っているものだけしか観察できないし、見えないのだ。観察から理論は生まれない。理論や観点が観察を選んでいるのだ。間違いない。帰納法は存在しない。帰納的な方向性すらない。by Popper

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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2014年11月 5日 (水)

進むべき道に迷うときには師を思いだす。

 年を取ると、いろいろと迷うことがある。学会でもやることはやり、本も十分書いた。

 私の場合、困ったときには、自分の師であった故慶応義塾大学教授小島三郎先生のことをよく思い出す。

 

 私は、古い世代の人間で、学者として独立するまで、徒弟制度のような学者の世界で育ってきた。なんとなくいつも先生の近くいる。ゼミのときも、大学院の授業のときも。学会でも。とにかく、共有する時間が長い。学部から数えると、約7年間(実際にはもっと短いが)だ。

 

 ところが、この経験がのちに、いろいろと役に立った。学生がいろんな問題を起こす。そのとき、そういえば、あのとき、先生はこのように対応していたなあ~とか、思い出す。そして、そのように対応する。まさに、暗黙知の伝承だ。

 

 さて、残念ながら、私の先生は、若くして亡くなった。私は、もう小島先生よりも年をとってしまった。そして、いまでも悩むことがある。しかし、幸運にも、いま私には別の先生がいる。それは、野中郁次郎先生だ。

 能力的には、はるかおよばず、近づくこともできないのだが、年をとった野中先生が、日本企業のためにいろんな形で元気づけている姿をなんども見てきた。幸運にも、バークレーでも、そして帰国してから日本でも、お付き合いさせていただいている。

 困った時、迷ったときには、私は師のことを思い出す。そこに、何か解があるように思えて。

2014年10月11日 (土)

まるで神の手に導かれるように

 

 長く生きていると、だんだんわかってくることがある。人との出会いの不思議ささだ。自分が積極的に会いに行くというわけではないが、あたかも神の手に導かれるように、偶然、会うことになる、というケースがあるのだ。

 

 とくに、私が不思議に思うのは、有名な研究者との出会いだ。学会に行っても、意図して会いに行っているわけではないが、不思議なことに広い校舎の中でも、会ってしまう人がいる。本当に神の手に導かれるように。

 

 また、有名人との出会いもそうだ。まったく予期せず、神のいたずらかと思えるほど不思議と会うことになる。本当にびっくりするときがある。

 もちろん、私は信心深い人間ではない。むしろ、社会科学者だと自負しているくらいだ。しかし、人との出会いに関しては、本当に不思議だ・・・という体験を何度もしている。

2014年9月27日 (土)

理系の学問はすごいが、文系もすごいと思うのですが・・・

 昨日は、10月から始まる慶大MCCの講座をめぐって、打ち合わせをした。ハンナ・アーレントもドラッカーもフロムもあらためて、本当に面白いと思った。

 確かに、理科系の研究者は、実に役に立つ知識を生み出す。しかし、社会科学者もすごい。

 ヴェーバーが、20世紀初頭に将来「命令と服従」の原理もとづく目的合理的な機械のような組織がやがて社会を支配し、何か不気味なことが起こることを予想していた。そして、その予想が当たって、何万人ものユダヤ人を合理的に殺すアイヒマンのような人間を生み出した。

 さらに、アーレントがアイヒマンは特別に悪人ではなく、命令と服従の原理に基づく組織に入れば、だれでもアイヒマンになるということ、つまり悪の平凡さ、悪の陳腐さを発見した。すなわち、本質的に悪なる意図をまったく持たない人間でも、人間は悪なる行為を行うことができるという発見。

 これってすごくないですか・・・

 

 そして、アイヒマンが人間になるための条件が、カントのいう自律的意志の行使だ、とアーレントはいう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

菊澤研宗先生と考える【人間の自由と組織の本質】
―社会の問題を自分達の問題として捉え直す―
  10月18日(土)開講、全6回、土曜日

http://www.sekigaku-agora.net/course/kikuzawa_k.html

 

2014年9月16日 (火)

若い学者から年配の学者へと変化していくのだが

 実は、自分自身、まだ若いつもりでいるのだが、やはり年配の研究者になりつつある。これは否定できない。そして、自分の研究の関心も変化していることも理解している。

 だから、私が教えた学生は、そのときどきの私の研究関心事を学んでいて、いまの私の研究については知らない。

 

 たとえば、私は若いとき、科学哲学を研究していたので、防衛大の私の教え子たちは、私からポパーの科学哲学について学んでいる。経営学の講義でも、科学哲学を徹底して教えていた。

 

 その後、米国留学から帰国し、新制度派経済学に関心が変化した。だから、その後の学生たちは新制度派経済学を私から学んでいる。

 そして、今年、UCバークレーから帰国し、新制度派経済学の限界から、カントやドラッカーの哲学的経営学に関心が変化しつつある。そして、ダイナミック・ケイパビリティ。さらに、統計学基づく米国流実証経営学批判などなど。

 

 だから、いまのゼミの学生は少々大変で、新制度派経済学、哲学的経営学、さらには科学哲学、そして統計学まで学んでいるのだが・・・・いったいどうなってしまうのでしょうか。パワーポイントによる発表も、みんな達人になっている。

  今年の合宿で、驚いたのはたくさんの学生が「無限後退」という言葉を使っていたことだ。これは、科学哲学者K.R.ポパーの得意な言葉なのだ。

 

 

 

 

2014年9月 7日 (日)

尊敬すべきミスター神戸

  先日の経営学会。久しぶりに懇親会に出席。にこやかにいろんな先生と話をしていたら、突然、「久しぶり、菊澤さん、これ読んでくれない?」といって、「方法論」に関する論文の抜き刷りをもってこられた先生がいた。

 だれか?かの有名な元神戸大学教授、元経営学会理事長である坂下先生だ。最近の若い大学院生でもやらない古典的な方法で、なんて古臭い作戦だと内心思った。

 しかし、結構、これは斬新で、インパクトがある作戦だった。何かわからないが、読んでみようかと思った。年をとっても、こういった若さが必要だなあ~と本当に感心してしまった。こいうわけで、先日は、坂下先生の異次元作戦に完全にやられてしまった。

 学者とはこうあるべきだということを教えていただいた。尊敬すべきミスター神戸に乾杯!本当にすごい。このような先生がもっと多ければ、学会はもっと楽しくなるのに・・・・

2014年8月11日 (月)

学会に参加する

    昨日は、特別講演の司会のため、経営行動研究学会に参加。実は、この学会は不思議な学会で、ふだんあまりみたことのない先生が多い学会。(たぶん、私の方が無知である可能性が高い。)

 今回も、知り合いが少なく、懇親会に出席するかどうか、迷う。数少ない知り合いの先生に、「知り合いがいなくて、不安」といったら、ジョークで「菊澤さんが知らなくても、向こうがみんな知っているよ」といってくれて元気づけてくれた。

 ということで、懇親会に参加。唯一の収穫は、今回の大会委員長である日本大学の松本先生と話ができたこと。なんと、松本先生は、私の不条理論の本をゼミで使ったことがあるという話で盛り上がった。実は、私も大学院生のとき、松本先生の論文をいくつか読んだことがあり、一度、お話ししたかったのだ。しかし、これまでなかなかお会いする機会がなかった。

 ということで、プチ満足することができた一日だった。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

2014年7月15日 (火)

学会にやってくる若手研究者の未来

 若いとき、学会に行くと、他大学の有名な先生がいて楽しかった。ましてや、自分が報告するときには、そのような先生に聞いてもらえることが嬉しかったことを思い出す。めったにない機会だからだ。

 

 ところが、最近の若い研究者の方々はどうなのだろうか。有名な先生は学会に来ないし、その代りに見たことも聞いたこともない先生が学会の理事として司会をしていたり、コメントしたりしている。しかも、そのコメントがひどかったり、トンチンカンだったりする。

 

 こんな学会というのは、楽しいのだろうか。まず、優秀な学者たちが学会に来なくなり、次は若い人たちも来なくなるのだろう。そう思うかもしれない。

 いや、そうではない。今後も、やってくるのだ。

 しかし、それはM・ウェーバーがプロ倫で予言した人たちだ。研究内容に関心があるのではなく、報告あるいは発表したというただ形式だけを求めてやってくるのだ。昇進のために、職をえるために。価値合理的ではなく、目的合理的に行動するために。

 

 

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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