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11)ポパーとカントの哲学

2017年9月20日 (水)

目的合理性と価値合理性の再説明:ヴェーバー、カント

菊澤です。

ヴェーバーの目的合理性と価値合理性に関心がある人が多いようです。なかなかわかりにくい概念ですが、今回はばっさり説明します。

ヴェーバーは、カント哲学に影響されています。

カントの議論を理解して、ヴェーバーを理解した方がいいと思います。

カントは、人間の理性は少なくとも2つあるとしました。それに対応するのが、ヴェーバーの目的合理性と価値合理性です。

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(1)カント理論理性=ヴェーバー目的合理性

因果法則に従って、現象を認識する理性です。これは、世界を因果論的に説明して理解したり、認識するだけの理性です。

 この理性を使うと、因果法則(AならばB)を応用して(BのためにAすべし)という行動命題を導くことができます。これがヴェーバーのいう目的合理的行動です。

 それは、カントの理論理性と関係しています。しかし、この理性はあくまで認識するだけの理性です。ですので、応用できると思っていても実際に行動するとは限りません。

 また、因果法則に従う行動は、常に自分以外に原因があるので、そのような行動をカントは他律的と言います。それは、物質や動物もそのような行動するので、このような行動に人間性はないということです。

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(2)カント実践理性=ヴェーバー価値合理性

 これは、価値判断する理性です。良いか悪いか。正しいか悪いか。価値判断すると、その後、人間は行為したくなります。「良いか悪いか。もし悪いとすると、何をなすべきか」つまり、人間に行為実践を要求してくる理性です。

 これは、主観的な理性ですので、これにもとづく行為も主観的です。それゆえ、その行為を保証するものは、その人がその行為に対して責任を取るという態度です。このような価値判断にもとづく、主観的な、わがままな行為、しかし責任を伴う行為を、カントは自律的、自由といいます。

 ヴェーバーの価値合理性とはこのような行為のことです。

菊澤 研宗: 組織の不条理 - 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫 き)

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2017年3月21日 (火)

論理実証主義と科学の限界

 哲学を排除し、経験科学を正当化する論理実証主義の科学哲学は、ヴィトゲンシュタイン、ラッセル、カルナップ、シュリックたちによって展開された。

 しかし、彼らの議論はやがてポパーによって徹底的に批判されることになる。結局、論理実証主義者によって明らかされたのは、経験科学の限界であった。つまり、哲学の存在意義であった。

 こうした科学哲学の研究をしてきたので、私は、科学としての経営学には限界があり、それゆえ哲学としての経営学も必要だと思っている。とくに、最近は後者の方に関心をもっている。

菊澤 研宗: 組織の不条理 - 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫 き)

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2017年3月19日 (日)

ポパーとクーンの科学観

  僕が、大学時代には、社会科学、とくに経済学や経営学の科学性が問題視されていた。特に、マルクス経済学だ。

  経済学は科学か?経営学は科学か?この問題を解くために、僕はポパーの批判的合理主義という科学哲学を学んだ。だから、商学部の学生だったが、経営学のことはまったく知らず、ひたすら「科学とは何か」を研究していた。

 ポパーは、科学的言明や科学的命題について厳密に議論する。その論理性は非常に徹底している。彼の結論は、科学的言明とは、実証可能性ではなく、反証可能性であった。経験的にテストする意義のある言明が科学的だという。

 これに対して、トマス・クーンは科学と呼ばれるものは、言明ではなく、何か「構造」をもつものだという。彼はそれを「パラダイム」といった。それは、成功のフレームワークというもので、厳密には定義できない。それは、法則や成功事例や実験の仕方などが含まれる。科学者はそのようなものとにもとづいて答えのある問題を解くようなものだという。

 ポパーの方が論理的であるが、現実はクーンのいうことが当たっているように思える。クーンのパラダイム論を再考したいと思っている。というのも、そこに不条理が潜んでいるからである。

菊澤 研宗: 組織の不条理 - 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫 き)

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2017年2月13日 (月)

カント、ドラッカー、小林秀雄、そして反特攻

   カントが発見した人間組織の原理とは、シンプルである。「自分の目的を達成するために、他人をモノや動物のようにあつかうべきでない(単なる手段とするな、あくまで一人の人間として扱え)!」である。これを、ドラッカーは「真摯さ」といい。小林秀雄は「大和心」という。

 

 

さて、終戦まじか。若き美濃部少佐率いる「芙蓉隊」という航空部隊。夜間攻撃部隊である。美濃部少佐が熱心に育てた部隊でもある。

 

   ある日の作戦会議で、速度の遅い練習機も含めて、「芙蓉部隊」の沖縄「特攻」作戦が議論された。このとき、若き美濃部少佐は異議を申し立てる。これまで航空攻撃をたくさん経験している美濃部は、特攻がもはや効果がないことを知っている。ましてや、練習機などは速度が遅すぎて無意味。

 

   特攻ではなく、別の作戦を!「夜間攻撃」をさせてほしいという。一生懸命練習している姿を見に来てほしいという。特攻を拒否した部隊として知られているが、「特攻」自体を否定したのではない。美濃部少佐は、「隊員はだれも死ぬことなど恐れていません」という。「死ぬ意義がほしい」という。「部隊」を人間として扱ってほしい、単なるモノや手段と見ないでほしいと訴えた美濃部少佐がいい。泣けてくる。

 

●慶應MCC

菊澤:リーダーの条件講座

http://www.sekigaku-agora.net/course/kk_2017a.html

 

2016年6月25日 (土)

不適切だが、合法的であるということ

  もう話は古くなってしまったが、舛添氏をめぐって、弁護士が「法的には問題ないが、適切ではない」と繰り返し言っていた。

  実は、この同じことをいっていたのが、ユダヤ人を大量虐殺したアイヒマンだ。彼は、イエルサレムの法廷で、「自分のやったことは、不適切だったかもしれないが、ナチス政権下では合法的であった」と。

 われわれ人間には、違法でも正しいことを行う勇気が必要なのかもしれない。というスタンスがカント哲学である。

菊澤 研宗: 組織の経済学入門 改訂版

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菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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2016年2月19日 (金)

科学と哲学:カント、ヴェーバー、小林秀雄

 カント、ヴェーバー、小林秀雄を研究していて、やっと以下の等式がすっきりしてきました。これまで、カントの自律性・自由とヴェーバーの価値との関係が、もやもやしていたのですが、少しすっきりしました。

 

(1)カントの自律性(実践理性)=ヴェーバーの価値合理性=小林秀雄の大和心=哲学

(2)カントの他律性(理論理性)=ヴェーバーの目的合理性=小林秀雄の漢心=科学

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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2016年2月 7日 (日)

小林秀雄、本居、ソクラテス、そしてカント

小林秀雄よると、通説では本居宣長が(1)科学主義的で実証的だが、(2)他方で古事記を信じる非科学的な人物だったといわれている。

しかし、小林秀雄が本居宣長の本を読むと、二つのことが一つにまとまり、一人の人物として浮かび上がったという。血のにじむような地道な努力によって、そのように理解できたという。

これに関する小林秀雄の語りは、力強い。大した努力もせずに本居宣長について語る学者をあざ笑うかのようだ。努力もしないものには、本居宣長なんて絶対に理解できない。なぜ科学的で実証主義的な本居宣長が、神話としての天皇の歴史を信じたのか。

...

パイドロスがソクラテスに「神話を信じますか」と質問する。ソクラテスは、「私が信じないというと君は安心するだろう。そして、私のことをふつうの人間だと思うだろう」・・・

カントは、ニュ―トン力学を真理だと信じていた。すべてを説明できると信じていた。しかし、それは、現象界に過ぎないとし、「モノそれ自体」にアプローチする哲学の可能性も存在していると論証した。この論証の方法を、ヘーゲルが誤解したのだが、カントは弁証法といった。

私には、以下の等式が観える。

小林秀雄=本居宣長=ソクラテス=カント 

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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2016年2月 4日 (木)

ソクラテス カント ポパー

   哲学上の系譜として、ソクラテス、カント、そしてポパーの流れがある。ポパーは、自分の哲学をカント哲学を現代風に解釈しただけという。

  しかし、ポパーはソクラテスに近い。ソクラテスは、対話が好きで得意だ。なぜか。結論が決まっているからだ。それは、対話を通して、われわれ人間が無知だという結論になるからだ。

  この同じことを行ったのは、ポパーだ。人間は真理を獲得できないというが、彼のすべての結論だ。真理を得ようとすると、無限後退するとう結論だ。

 カントは少し違う。彼は、人間が科学として知るのは現象だけで、「モノそれ自体」については不可知なのだといった。だから、科学では夜空を説明できても人間は説明できないという。科学では、もののあわれ、真摯さ、大和心、モノそれ自体が分からないのだ。これがすごいね。

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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2016年1月23日 (土)

人間主義的マネジメント

ココ壱番屋はすごい企業のようだ。経済合理的経営だけではなく、人間主義的な経営を展開している企業ではないかと思える。

パートの従業員が横流しに気づき、それを報告した。そして、その報告を本部が受け止めて、すぐに行動に移した。いいね。

食品関係の企業として、腹が座っている。損得計算を超えているように思える。食品企業の手本。

記事は消されてしまったようだが、「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者である宗次徳二氏は、周囲の人たちは敬愛を込めて宗次氏を「変人」と呼んでいると壱番屋OBがいっているようだ。莫大な資産を、自身を助けてくれた人に返す方法ばかり考えているという。

2016年1月10日 (日)

我が上なる星空と、我が内なる道徳法則

     文科省が、理科系は必要だが、文系は不要だということをいいはじめて(その後、否定したが)、改めて気になる言葉がある。それは、若い時には、まったく気にならなかった言葉で、カントの墓に刻んであるカントの言葉である。

「我が上なる星空と、我が内なる道徳法則、我はこの二つに畏敬の念を抱いてやまない」(『実践理性批判』の結びより)

 

 カントは、若い時、天体の研究をしており、ニュートン力学に精通していた。当時は、自然科学と人文学は区別されていなかったのである。

 

  東京は街の光が多いので、夜空の星を見るのは難しい。しかし、田舎の冬の夜空を見ると、星だらけだ。その光景は不思議そのもので、宇宙の原理や宇宙の成立ちへの興味は尽きなくなる。

 

  しかし、カントはそのような宇宙の原理や自然の原理では説明できないものが、人間行為にあることに気づいた。そして、そこから彼は人文学へと研究を進めていく。カントは、そこにも原理や法則があると考えた。そして、彼はそれを「道徳法則」といった。あるいは、また「自律(自由)の原理」ともいった。

  この内なる道徳法則や自律の原理に崇高さや畏敬の念を抱けない文科系の学者は、いつも自然科学者を上層とする階級社会に生きることになるだろう。 

菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)

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菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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