経営学の基本命題2:経営学入門3
やっと、本の原稿を提出したので、そのヒマを利用して、経営学入門の続きを久しぶりに書きたいと思います。
経営学の基本命題は、以下の二つだといいました。
(経営学の命題1)所有(株主・資本家)と支配(経営者)の分離(巨大企業)
(経営学の命題2)企業の目的は非利益最大化
この二つの命題が経営学に存在意義を与えているのだ。これに対して、新古典派経済学の命題は以下のようになり、経営学は経済学から独立できる可能性があるのだ。
(経済学の命題1)所有と支配の一致(企業家企業)
(経済学の命題2)企業の目的は利潤極大化
以上のような二つの命題を経営学の基本とすると、企業経営をめぐってどのような問題領域が生まれてくるのか。
(1)コーポレート・ガバナンス分野
所有と支配が分離し、しかも企業経営者は利潤極大化しようとしないので、経営者の不祥事が起こり、コーポレート・ガバナンス問題が生まれてくるのだ。いかにして、企業を統治するのか。このコーポレート・ガバナンス問題が経営学の重要な領域となる。この領域は、企業の社会的責任論(CSR)、コーポレート・ファイナス、企業価値にも関連する。
(2)経営戦略論分野
所有と支配が分離するような大企業は、株主以外にもたくさんの利害関係者(ステークホルダー)に囲まれることになる。経営学では、利害関係者のことを「環境」と呼ぶが、企業経営者はこのような「環境」に適応することなくして、生存することはできない。いかにして、環境に適応するか。このような戦略論的問題が経営学の重要な領域となる。
(3)経営組織論分野
所有と支配が分離するような大企業では、所有と支配が一致するような中小企業では発生しなかった組織デザイン問題や組織構造上の様々な問題が発生する。いかにして、このような組織問題を解決するか。このような経営組織論的問題が経営学の重要な領域となる。
以下、上記の(1)(2)(3)の各論領域へと議論が展開されることになる。昔は、管理会計分野(財務分析+損益分岐点など)なども経営学の一領域だったのだが、最近は経営学者が勉強不足のせいか、排除される傾向があるのは残念。
続く