錯綜するダイナミック・ケイパビリティ論
わかりにくい。難解である。眠くなる。こいった声をよく聞く不評の「ダイナミック・ケイパビリティ論」。
このダイナミック・ケイパビリティ論をめぐる状況は複雑である。それにもかかわず、早くてっとりばやく紹介しようとして、失敗している日本の研究者は多い。そういった学者が、2次的にこの議論をわかりにくくし、錯綜化しているともいえる。
ダイナミック・ケイパビリティ論をめぐって、ウインター、ヘルファット、そしてアイゼンハートたちがいろんな議論を展開しているが、やはり本家はデイビット・ティースだ。この点を、押さえないと、議論はぐちゃぐちゃになる。
たとえば、ヘルファットは、ダイナミック・ケイパビリティ(DC)を経営者の認知能力ととらえている。経営者が、環境変化を感知し、そこに機会をとらえ、そして組織を変化させる能力だと考える。特に、この能力が変化を感知するという点に注目すると、ダイナミック・ケイパビリティは心理学的認知能力ととらえたくなるものだ。
確かに、この考えはわかりやすい。私も、バークレーにいるとき、直接、ティース教授に、DCは経営者能力として理解していいのか聞いた。しかし、彼の答えは、NOだ。なぜか。
ティースは、DCは経営者能力だけではなく、組織能力でもあるという。なぜか。環境の変化を感知するのは、経営者だけではなく、組織の現場が感知する場合もあるからだ。この点を、ヘルファットたちは理解していないのだ。この現場を、多国籍企業の海外子会社とみることもできると、ティースは考えているのだ。
つづく。
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