菊澤の不条理とカミュの不条理との関係
これまで、私は「不条理」の研究をしてきたが、カミュの不条理文学とはまったく無関係なものとして、研究したきた。
菊澤 研宗: 組織の不条理 - 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫 き)
しかし、やはり関係があるように思える。
(1)カミュは、「異邦人」という小説を発表したとき、「シュシュポスの神話」という論文も同時に発表している。カミュの不条理論は、実存主義への反論でもあるという。
(2)実存主義とは、神はいない。真理は獲得できない。ヨーロッパをニヒリズムが支配する中、普遍的な真理を目指すのではなく、自分自身の実在は確信できることから、自分自身が信じる個人的な真理、自分自身が目指す個人的目的を追求して生きることによって、自己の存在を確信できるというような議論である。
(3)この実存主義への反論が、カミュの不条理論だと思う。それは、シーシュポスの神話が事例である。
シーシュポスは、神を欺いたので、神に岩を山頂にまで運ぶといった罰を負う。しかし、山頂まで運ぶと、また岩が下に転がり、これを永遠に行うことになる。
(4)これは、個人的には合理的な行動であるが(実存主義)、全体としては無意味なのだ。つまり、個別合理的と全体合理性が不一致のことを不条理と言っていると解釈すると、私の研究している不条理論と、カミュの不条理論は一致することになる。
この関係については、さらに今後追求してみたい。
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