目的合理性と価値合理性の再説明:ヴェーバー、カント
菊澤です。
ヴェーバーの目的合理性と価値合理性に関心がある人が多いようです。なかなかわかりにくい概念ですが、今回はばっさり説明します。
ヴェーバーは、カント哲学に影響されています。
カントの議論を理解して、ヴェーバーを理解した方がいいと思います。
カントは、人間の理性は少なくとも2つあるとしました。それに対応するのが、ヴェーバーの目的合理性と価値合理性です。
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(1)カント理論理性=ヴェーバー目的合理性
因果法則に従って、現象を認識する理性です。これは、世界を因果論的に説明して理解したり、認識するだけの理性です。
この理性を使うと、因果法則(AならばB)を応用して(BのためにAすべし)という行動命題を導くことができます。これがヴェーバーのいう目的合理的行動です。
それは、カントの理論理性と関係しています。しかし、この理性はあくまで認識するだけの理性です。ですので、応用できると思っていても実際に行動するとは限りません。
また、因果法則に従う行動は、常に自分以外に原因があるので、そのような行動をカントは他律的と言います。それは、物質や動物もそのような行動するので、このような行動に人間性はないということです。
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(2)カント実践理性=ヴェーバー価値合理性
これは、価値判断する理性です。良いか悪いか。正しいか悪いか。価値判断すると、その後、人間は行為したくなります。「良いか悪いか。もし悪いとすると、何をなすべきか」つまり、人間に行為実践を要求してくる理性です。
これは、主観的な理性ですので、これにもとづく行為も主観的です。それゆえ、その行為を保証するものは、その人がその行為に対して責任を取るという態度です。このような価値判断にもとづく、主観的な、わがままな行為、しかし責任を伴う行為を、カントは自律的、自由といいます。
ヴェーバーの価値合理性とはこのような行為のことです。
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