経営学は理論科学か、技術科学か、規範科学か
昔、ドイツでは経営学の学問としての方向性をめぐって論争が起こった。というのも、経営学が経済学者によって「金儲け学問」として批判されたからだ。
当時、3つの方向性が打ち出された。
(1)現実を理論的に説明することを目的とする理論学派
W.リーガー
(2)企業をめぐる病理現象を治す医学的な技術学派
E.シュマーレンバッハ
(3)企業にあるべき姿を示す規範学派
H.ニックリッシュ
私の先生は、(1)の理論学派、特にリーガーを推進していたので、弟子として私も(1)の立場にあった。しかし、先生が亡くなり、自分自身も年を取ると、(2)の立場になり、さらに企業の病理を治すには、(3)の立場も必要だという考えにいまでは至っている。
私の先生は若くして亡くなったのだが、実は最後は(2)の立場にいたように思える。というのも、ある出版社が、学説研究シリーズを企画しているとき、私の先生はリーガーではなく、「シュマーレンバッハ」を選んでいたからだ。
「菊澤君、シュマーレンバッハだったら書くよ、いったんだよ」と笑っていっておられた。
その後、先生は慶大図書館にあるシュマーレンバッハの本を全部集めていた。しかし、その本は出版されることはなかった。すでに癌が先生を蝕んでいたからである。
シュマーレンバッハは、20世紀のドイツ自由経済社会が拘束経済社会へと変貌していることを病理現象とみなした。価格が自由に変化しない不健全な経済だ。そして、それが個別企業の固定費増加にあるとみなし、固定費削減政策こそが経営学の課題だと考えた。
私は、企業の病理を「不条理」とみなしている。それは、全体と個別の不一致、効率性と正当性の不一致、短期と長期の不一致である。この不条理の原因と解決を菊澤経営学の課題だと思っている。
この不条理を解決するために、新制度派経済学が必要であり、経営哲学が必要なのであり、そしてダイナミック・ケイパビリティが必要だと思っている。
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