帰納の論理のみならず帰納的な方向性すらない by Popper
菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)
いまだ「帰納の論理」という神話を信じている人が多い。帰納法は真の論理ではない。有限の観察から無限の普遍的理論言明を導く論理はないのだ。
さらに、ポパーは、観察から初めて理論を作るという帰納的な方向性すらないという。すべての観察は、理論、観点、関心に基づいているからだ。われわれは、理論や観点や関心がないと、観察できないのだ。
観察は選択なのだ。「みてください!」とお願いしていも、どことをみていいかわかないのだ。また、出来の悪い学生に多いのだが、データーを集めて、新しい仮説を帰納的に作ろうとする学生がいる。結果は、わかっている。常識的な仮説命題となる。なぜか。常識にもとづいて、データーを選んでいたからである。観察から始まっていないのだ。
我々の認識は知識、言語などに依存するのだ。これを理論負荷性のテーゼという。
鍵を落とす。どうやってみなさんは探すか。世界は無限に広がっている。そこで、みなさんは観点を決める。それは、今日、一日の行動を思いだすことだ。そして、その記憶的知識に基づいて観察する。
問題ここだ。もしその記憶が間違っていて、今日はこの部屋に来ていないと思い込む。そのとき、たとえその部屋に、しかも自分の足元に鍵があっても、見えないなのだ。人間は。
以上のように、帰納的な方向すらない。観察は常に理論とともに始まる。つまり、演繹的だ。
では、帰納的な確率言明はどうか。それは、現実を表しているのではなく、自分の心の中の確信の度合いを表しているにすぎないというのが、ポパーの答え。これについては、次回に。
菊澤研宗: ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー(祥伝社新書)
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