科学!科学!と叫ぶ人は真理の定義すら知らない人が多い。
私の最近のドラッカーの著作を、一見して、まだこんな非科学的な研究をしているのか、と批判的な人、冷笑する人がいるかもしれない。慶大の菊澤は、神秘主義で、科学のすごさをしらない、時代遅れの研究者だと思うかもしれない。
とくに若い人は「科学」という言葉に惹かれるだろう。ところが、こういった若い人ほど、科学に騙されるのだ。科学、科学、と騒いでいる人ほど、科学が目指す「真理」というものが何か定義すら知らない人が多い。
真理には、いくつかの定義がある。しかし、おそらく一般的なの対応説だ。それは、「ある言明が実在に一致したとき、そのときのみその言明は真理である」というものだ。
このような真理なる言明を、われわれはどうやって得るのか。
ある言明が実在と一致していることを証明するには、別の言明が必要となる。しかし、その言明が正しいことを証明する必要がある。そのために、それを説明するさらに別の言明が必要となり、結局、無限後退していくことになり、もとの言明と実在の一致を永遠に証明できないのだ。
つまり、人間はある言明が真理かどうか、確定できないのだ。したがって、すべての理論言明は仮説的なものにすぎないのだ。物理学の理論でさえ(ハイゼンベルグの不確定性原理もあるが・・・)。その程度の知識しか、われわれは得れないのだ。
それにもかかわらず、実証研究をして、あたかも真理を獲得したかのような研究者がいれは、それは研究者として知的誠実性を欠いた人物か、無知か、非論理的な人物であろう。
したがって、科学でないものは、「無意味」という安易な考えは捨てるべきである。むしろ、哲学的な議論や哲学的なマネジメントはいまだに必要であり、有意味なのだ。
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