日本企業に求められるダイナミック・ケイパビリティ
1990年代、かつて、市場経済中心の米国で展開されたポーターの状況決定論的な競争戦略論は米国企業的であるのに対して、終身雇用のもとで人材を育成し、固有の資源や資産を形成する日本企業は資源ベースの戦略論が得意だといわれていた。
ところが、やがて日本企業が保有していた固有の物的人的知的資源や資産が硬直化し、逆に発展するための足かせとなっている。これを、レナード・バートンは「コア・リジリティ」と呼んだ。
こうした状況で必要なのは、ダイナミック・ケイパビリティとそれにもとづく戦略だ。これは、ゼロから新しい知識、技術、資源を90年代以前のように形成するということではない。むしろ、すでに形成されている固有の資源・資産・知識・技術を、いま置かれている状況で再構成することである。現状の資産をいろんな形で、再構成、再配置することである。
たとえば、ソニーにはたくさんの知識や技術があるだろう。この知識を再構成して、たとえば未開の家電業界に進出するような戦略だ。ソニーが創る家電は魅力的かもしれない。これがダイナミック・ケイパビリティだ。
かつて、進化論の縄張り理論が支配的であった。自分たちには縄張り(生活圏 domain)があり、その範囲をでないように活動するのが、生存する道だという考えである。しかし、これでは維持できても進化できないのだ。それは、淘汰されるのを待つだけなのだ。あえて、自分が保有している資産を再構築しつつ、あえてドメインを打ち破る。ここに進化がある。
ダイナミック・ケイパビリティについては、以下を参照。
ハーバード・ビジネス・レビュー
拙稿「ダイナミック・ケイパビリティと経営戦略」
http://www.dhbr.net/articles/-/3068
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