10月のアゴラ講座:自由、分権、そして集権
組織について考えるとき、「人間の自由」、「人間の自律性」、「人間の自律的意志」について深く考える必要がある。
昔、H.A.サイモンが伝統的な経営管理原則を非科学的と批判し、「ことわざ」のようなものだと揶揄した。彼は具体的にいろんな点を批判したのだが、以下の二つの原則が相互に矛盾していることを指摘した。
(1)組織は職務に従って分権化すべきである。
(2)組織は全体を調整するように集権化すべきである。
サイモンは、ここで集権性と分権性が矛盾すると考えたのである。組織は、どこまで集権化し、どこまで分権化すればいいのか。最適点があれば、明確にしてほしい、それが科学だと主張したのだ。
しかし、このサイモンの批判は的外れである。集権性と分権性はまったく異なる次元のものなのだ。そのことを明確に理解していたのは、オーストリア出身のピーター・ドラッカーであった。
集権制組織は、「命令と服従の原理」にもとづく因果論的な機械論的組織であるのに対して、分権制組織は、自由と責任の原理にもとづく有機体的な組織なのだ。前者には、人間の自由はない。後者には自由があるのだ。
命令と服従の原理に基づく集権制組織から生まれたのは、ユダヤ人を大量虐殺したアイヒマンである。彼は、法廷で、自分は上司の命令に忠実に従っただけだと何度も主張した。そして、その平凡さに気付いたのは、ハンナ・アーレントであった。
集権制組織と分権制組織。どちらがより強い優れた組織なのか?10月からはじまるアゴラ講座では、このような問題について、みなさんと議論してみたいと思います。
以下の講座を開講します。関心のある方はぜひご参加ください。
●菊澤研宗先生と考える【人間の自由と組織の本質】
―社会の問題を自分達の問題として捉え直す―
10月18日(土)開講、全6回、土曜日
http://www.sekigaku-agora.net/course/kikuzawa_k.html
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