富士フイルム、古森社長の「魂の経営」ーちょっとだけ感動部分が
私は企業に関して疑い深いので、普段は経営者の書いた本は読まない。しかし、今回、ダイナミック・ケイパビリティとの関係で、富士フイルムに関心をもっていたので、古森社長の本『魂の経営』を電車の中で読んだ。
なかなか面白い。特に、CSR(企業の社会的責任)に関して、私が求めていた事例がそこにあったのだ。私は、カント哲学にもとづくCSRを日ごろから主張し、説明している。それは何か。
カントによると、「責任」という概念は独立した概念ではなく、常に「自由」という概念と「対」、「セット」なのだ。その意味は、こうだ。
自由とは、自分自身が原因となって行動する自律的な行動のことである。したがって、もしそのような自由な行動が失敗したならば、その行動の原因は唯一自分にあるので、その責任もまた自分がとることになる。この意味で、「自由」と「責任」は対になっているのである。
この観点からいうと、社会に対して責任を感じるには、その前に企業が社会に対して自由を行使するような行動、つまり自由に商品を販売している必要がある。それゆえ、そのような商品に問題が起こった時には、ほかでもなくその会社が責任を取る必要がある。これが企業の社会的責任だといいたい。
だから、社会に対して自由を行使してない企業には社会的責任などないのだ。
さて、富士フイルムの話に戻ろう。今回の東北大地震で、富士フイルムには「津波で海水や泥かぶった写真の救済法を教えてほしい」という問い合わせが多くきたようだ。これに対して、富士フイルムでは、どうすれば写真が救えるか写真救済プロジェクトを進めたようだ。
この活動に対して、以下のような文章がある。私は、これだ!と思った。
古森社長
「このときほど、写真を生み出した自分たちが、この写真を再生させなければならないという強い使命感を感じたことはない」
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