経済合理的マネジメントを追求する若者は不条理に陥ることになる
昨日、偶然、テレビで東大生をクローズ・アップする番組をみた。為替を扱って短時間でお金を稼ぐ。さらに、大学の2,3年生を中心としたサークルで、株式会社の設立の仕方、いかに合理的に会社をマネジメントするのかなど研究するグループの様子を放映していた。
その番組は、いまの東大生のすごさを煽っていた。もちろん、このような若者やサークルは、慶大にも早稲田にも一橋にもある。
政府も、いま若者の起業を奨励し、どんどんベンチャーを起こすような社会を形成しようとしている。そして、その先にある手本は、いつものように米国社会だ。
私は、いまでは年をとり、私のいうことはあまり役に立たないのだが、私は若いときに不思議な経験をした人間の一人だと思う。
私は慶大で経営学を学ぶために大学院に残ったのだが、今の優秀な若い学生とは違って、経営実践的な知識はいっさい習わなかったし、研究もしなかった。
なぜか。
私の指導教授が、そんな経営学の話は後で、自分で勉強すればできる。いま重要なのは、哲学。とくに、科学哲学だと繰り返しいった。これは、若いときに勉強しないとできないし、みんなでやらないと理解できないといっていた。
実をいうとは、私は経営学が好きで大学に残ったわけではなかった。この科学の哲学が好きで残ったというのが本当のところ。そして、結果は正解だった。
さて、私は、いま大学の1,2年生で起業家を目指して、日々、実践的な経済合理的な経営知識をマスターしている優秀な学生をみるたびに思うことがある。
やはり、急がないで、いまこそ知識を深める時期だと。つまり、哲学が必要だといいたい。私の研究では、経済合理的マネジメントを徹底すると、必ず不条理に陥ることになる。つまり、合理的に不正を犯すことになる。この不条理を回避するために、できるだけ早い時期に哲学を学んでほしい。これが私の願いである。
菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)
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