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2013年12月

2013年12月29日 (日)

知識はどこから生まれてくるか:経験か先験か

 知識はどこから生まれてくるかをめぐっては、これま何度も激しい議論が展開されてきた。

 

 いまだに、経験を通して知識は生まれると思う人は多いだろう。しかし、簡単な思考実験をすると、この答えは問題を生み出す。つまり、もしそうだとすれば、かなり多くの人間はすでに死んでいる。経験してからでは遅いような知識は非常に多くある。「道路を走る自動車は危険である」という知識を各人がえるために、経験は必要だろうか?

 

 その他、いろんな議論があるが、やはり人間は知識をもっており、それにしたがって演繹的に推測して行動していると考えた方が矛盾が少ない。子供をもった親は理解できると思うが、よちよち歩きの子供でも不思議なことに親が思うほど危険なことをしないものだ。

 

 ではその知識はどこからくるのか?答えはわからない。天から降ってくるのか、閃くのか。

 

 しかし、深刻な問題は、そこにはない。どこから知識がうまれてこようが、It doesnot matter.だ。たした問題ではない。

 

 問題は、生まれた後、その知識に従って推測して行動しても問題がないかどうかだ。問題がなれければ、保持されてゆくし、問題があれば、放棄されるか、修正されるかだ。

 

 こうして知識は成長してゆくといったのは、K・R・Popperである。私はいまでもこの説を信じている。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

 

2013年12月24日 (火)

米国は日本より絶対に優れているか?

米国に来て、日本で聞く「常識」に疑問をいだくことがある。
 

(1)米国の学生に比べて日本の学生は勉強していない。本当に?少なくとも三田の学生は相当勉強しているように思うが・・・

(2)米国の大学システムの方が日本よりもすべてにおいて優れている。本当に?学部は日本で、大学院は米国がいいかも?
 

(3)日本人も、外国人のように会議でがんがん自己主張するような人材になるべき。本当に?世界の人々が、youtubeなどで日本人らしさを知り始めている。
 

(4)日本の大学の講義のように一方的な講義よりも米国の相互作用型の方が優れている。本当に?「パラダイムとはどういう意味か?」という質問で、学生に事例をいわせてあっという間に40分過ぎることも。
 

(5)日本の筆記試験型入試より米国のAO入試の方が優れている。本当に?今後、国立大学は面接重視ということになるようだが、私の個人的経験では、面接すると、みんな良い人に見えてきて、選択できない。最後は、面接という点数試験になる(3人の面接官の持ち点各10点の合計で合否を決めましょうということに)。
 

(6)日本人より米国人の方がイノベーションが多い。本当に?イノベーション、新理論、新技術が米国で生まれるというよりも、そのような知識、技術、能力をもった人々が世界から米国にやってくるのだ。プラット・ホームという感じ。

などなど。・・・・・・・・

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

テーラーからドラッカーへ:役に立たない経営学か

    管理論の父と呼ばれいているF.W.テーラー(経営学の父はドラッカーらしいが)の管理原則はいまでは古くて、だれも学ぶものはいないかもしれない。組織を階層化しろとか、分業化しろとか、権限を委譲しろとか。あたりまえのことばかり。
 

   この原則に従うと、メンバーそれぞれが機械組織の部品となるので、管理者の役割はなくなることになる。そこで、テーラーは「例外の原理」という原理を掲げた。つまり、例外的なことを扱うのが管理者の仕事だと。
 

    では、例外的な仕事とは何か。この点を解明するのが、学者の仕事だ。意外に理解していない人が多い。統計学ばかりやっている学者にはまず理解できない。部下が行う仕事は、ほとんど企業利益を最大化するための仕事だ。みんなで優秀なら、残っている仕事とは何か。道徳的価値判断を求めてくる仕事しかないのだ。人間倫理に関わる仕事だ。だから、ドラッカーがいうように倫理感のない人が管理者になってはならないのだ。
  

   事例:いまある薬品会社の薬を使用した人が問題を起こしているという数件発生。すべて回収するかどうか。会計部門からは、回収には膨大なコストがかかるので、秘密にして処理した方がいいとの意見。営業も、この事例が知られると、販売にマイナス影響が出るので、秘密という意見。部下たちの意見を前に、管理者が以下のことをいえるかどうかだ。「社会倫理にもとづいて、コストがかかってもすべて回収し、事実を公表する。後のすべての責任は私がとる」と。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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2013年12月23日 (月)

自由人とみるかダメなやつとみるか

    これを自由とみるか、ダメなやつと見るか。UCBにはたくさんセミナーがある。水、コーラー、ジュース、お菓子などが教室の端においてある。セミナーが始まり、スピーカーの話がはじまる。
 

    遅れて、部屋に入ってくる大学院生がいる。話よりもコーラーとお菓子をまず取し、食べはじめる。がりがり食べる音がする。匂いもしてくる。一瞬、教室の空気も変わる。
 

    さて、こういったセミナーでの光景をみて、みなさんはどう思うだろうか。「アメリカはすごい。アメリカは世界1」という観念に侵されている人は、「やっぱり日本と違って、米国は自由だ!!!」と思うのだろう。
 

   しかし、私はそう思うわない。そのような学生は、米国でもやっぱりダメなやつだと思う。集中していないし、食べ物が目当てだったとしか思えない。ゼミナーでも、できる学者や研究者はすきがない。日本的にいうと、やはり心技体が一致しているように思える。
 

   米国は、自由というよりも、人間が多様すぎて、諦めているのだ。一つのルールで縛るなんて無理な国なのだ。経済学的にいうと統制のコストが高すぎ。こちらのネイティブに聞くと、やっぱり授業中に食べ物をバクバク食べている姿は、いいとは思わないといっていた。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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2013年12月21日 (土)

会社名と社長名

    この間、英語の記事を読んではじめてわかったことがある。会社名は「トヨタToyota」で、社長は「トヨダToyoda」ということに。トヨタについての論文を書いていたので、すぐに論文を修正した。知らなかった。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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2013年12月19日 (木)

研究が先か、統計ソフトが先か

  米国に来てわかったのは、こちらでは[The New York Review of Books][London Review of Books]などのすばらしい書評ビジネスがあることだ。日本にはない。
 

  クルーグマン、スティグリッツ、サンステインなど錚々たる学者が、8-9ページに渡って、論文のように特定の本についてコメントする。クルーグマンなどはものすごい批判的な書評を書く。ときには、書かれた著者との論争もある。
 

  最近では、サンステインが、統計を使って歴史上もっとも意義のある人物をランキングする本を批判していた。ウイキペディアを使って、その記事が長いかどうか、その記事のヒット数、その記事が何度改定されているか、そのパージと他のリンクの数などを統計的に処理して、ランクを決めるのだ。結論は以下の通り。

  1キリスト、2ナポレオン、3、モハメッド、4シャークスピア、5リンカーン、6ワシントン、7ヒトラー、8アリストテレス、9グラント将軍、10ジェファーソン・・・・
 最近、本や文献をデジタル化し、そこに出てくる文字を分析するソフトが発展している。これをメタ分析ともいうが、まさにいま米国の学者の世界は、マルクスが嘆いていた世界になっている。
 

  つまり、昔の学者はある研究をするために統計学を使っていたが、いまは統計ソフトにしたがって学者は研究させられているという状態。つまり、統計ソフトによって学者の研究は決定されている。そのうち、学者も「疎外感」というものを感じることになるのだろうか?

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

2013年12月 9日 (月)

知的財産をめぐる日米の違い

   最近は、韓国のサムソンが強く、日本のソニーや他の日本企業が凋落していることから、日本企業を辞めた多くの社員がサムソンに雇われて、技術や情報を流しているという記事をみる。そして、さらに興味深いことに、現役の社員たちがそのような日本人を「裏切り者」と呼んでるという記事だ。
 

   このことを、アメリカ人に話すと、興味深い。そんなことは、米国企業ではないのだ。なぜか。日本と異なり、雇用契約が厳密だからだ。契約書には、会社を辞めても企業情報を漏らしてならないとか・・・たくさん規定してあり、そのような問題を商売にしている弁護士がたくさんいるようだ。
 

   この点、日本企業の研究者たちの雇用契約はどうなっているのか?推測できるが、たぶん「あいまい」なのだろう。もちろん、明確さがいつもいいとはかぎらないが・・米国では特許や知的財産権めぐる訴訟が多すぎて、技術の発展を妨げていることをスティグリッツは嘆いている。技術を無断で使用している企業を探り出してお金を絞り取る法律会社も米国にはたくさんあるようだ。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

円安と日本企業 ユーロ高とドイツ企業

     現在、米国に住んでいるので、円の動きが気になる。1年間前はまだ1ドル80円ぐらいだった。ところが、今は1ドル103円ぐらい。つまり、この1年で100万円が80万に、200万が160万に、300万が240万になった感じだ。
 

    さて、円安になると、日本の企業が儲かるというのが一般的な意見だが、果たしてそうだろうか。大抵の大企業は、すでに海外に生産拠点をもっているので、実はそれほど効果はないのではないか。また、ドイツの例からもいえる。現在、ユーロ―は1ユーロ140円ぐらいで、非常に高い。それでも、ドイツの企業は売り上げを伸ばしている。
 

   これらのことを考えると、やはり日本企業の問題は内在的な問題のように思える。本質的に、日本の製品は高い。いろんな理由はあるだろう。しかし、ドイツは旧プロイセン+オートリー=ハンガリー帝国関連の東欧諸国を効率的に利用してコストを下げ、さらに強いユーロで原料を安く購入しているのだと思われる。
 

   日本の企業の製品がもう少し安ければ絶対に売れる。最近、米国でも日本のハイテク・トイレの存在が注目されているが、実際にはいまだ米国人はコスト感覚が強く、中国から輸入された安いトイレを購入している。そのため、米国の超有名会社アメリカン・スタンダードは買収された(日本企業Lixilに)。

 もう少し安くして健康志向を前面にだせば、日本のハイテクトイレは爆発的に売れると思う。トヨタのプリウスのように。TOTOとLixilに期待したい。ハイテクではなく、あくまで健康志向で。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

2013年12月 7日 (土)

エーリックとサイモンの賭け:リベラルと保守派の論争

    米国では、いろいろ面白い論争がある。1980年に、エコロジストのポール・エーリックと経済学者のジュリアン・サイモンが賭けをした。エーリックは、人口が増加するので、資源は希少化する。それゆえ、5種類の金属を選び、10年後は価格が上昇することに賭けた。サイモンは、人間が採掘などイノベーションを起こすので、供給が増えて、価格は下がることに賭けた。

 エーリックは、外交的で、当時、すでに有名で、テレビにもよく出ていた。とにかく、人口増加を抑止する必要があり、政府は子供用品に高い税金を掛けるべきだと主張をしていた。他方、サイモンは内向的で、大人しく、自殺を考えるほどだった。彼は、人間はイノベーションを起こし、市場が問題を解いてくれると思っていた。

 ちょっとしたことから、両者は論争となり、結局を賭けをすることになった。この両者の議論はアカデミックな世界にとどまらなかった。政治と関係している。民主党のカーターはエーリックに影響され、共和党のレーガンはサイモンに影響された。結果はどうだったか?

 10年後、5種類の金属は50%値下がりし、サイモンが勝った。サイモンの家にエーリックから小切手が届いたのだった。地味なサイモンは、一躍、保守派のヒーローとなり、テレビもはやし立てた。そして、二人はどうなっていったのか・・・これは、本当にくあった話。

2013年12月 5日 (木)

シャープの試みは面白い

    ジャープの「さん付け運動」は非常に面白い。役職ではなく、だれでも「さん」で呼ぶというのだ。慶応出身者は、「ああ慶応と同じで、みんな・・・君と呼ぶのだあ~」と思うかもしれない。

  そうではなく、変化への試みとして面白いということ。いつも述べているように、われわれを取り巻く世界は三つある。物理的、心理的、そして理論的世界だ。この三つの世界があるので、変化が難しいのだ。この中で一番簡単に変化できるのは、物理的な世界かもしれない。

  問題は、心理的世界だ。最近の行動経済学では、人間には「Loss aversion 」というバイアスがあるということ、つまり得るよりも失うものの価値を高く評価するというバイアスだ。このバイアスがあるかぎり、新しい社長が大変革案を出しても、従来のシステムを失う価値の方を高く評価してしまうのだ。

  このバイアスを変化さるには、物理的な変化か理論的世界での変化が必要となる。シャープがやろうしている試みは、世界3のアプローチ、理論的アプローチであり、これによって心理的な変化を起こそうとするものかもしれない。という意味で、興味深い。成功するかどうかわからないが・・・

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

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