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2013年11月 2日 (土)

カバーリングロー:被覆法則とは?

  学生時代に、ポパーの科学哲学について、ゼミで議論しているときに、理解はしていたが、実感できない言葉があった。それは「covering law:被覆法則」だ。因果命題の背後に被覆法則があるということだ。

  米国に来て、計量的な研究ばかり、聞かされているので、いろいろとわかってきた。やはり、経済学、新古典派経済学はよくできてると思った。被覆法則は基本的に2つ。

(1)すべての消費者は効用最大化する。

(2)すべての企業は利益を最大化する。

そして、(1)と(2)さらに、いくつかの条件から、需要と供給の法則が導出される。

(3)もし需要が供給より高いならば、価格は上昇し、低いならば、価格は下がる。

これらの三つの被覆補足から、相関関係ではなく、様々な因果関係(仮説)が導出できる。法則(1)から消費者に関する様々な因果関係が導出される。たとえば、「もしスーパーAよりもBの方が同じ商品の価格が安いならば、消費者はAよりもBに買に行くだろう。」これは、相関関係ではない。(1)を被覆法則とする因果命題である。

また、法則(2)から企業に関するさまざな因果関係(仮説)が導出できる。相関ではない。たとえば、「銀行から資金調達する方が株式市場を通して資金調達するよりも資本コストが安いならば、企業は銀行から資金を調達しようとするだろう。」これは、相関ではなく、(2)被覆法則とする因果命題である。

さらに、法則(3)から市場に関する様々な因果関係(仮説)が導出できる。「ある地域でガソリンエンジン自動車販売数が急激に増加すると、ガソリン価格は上昇するだろう」これは、法則(3)を被覆法則とする因果命題である。

残念ながら、経営学はこのような構造で仮説が形成されて、実証研究されていない。被覆法則がないので、仮説の大半は相関関係なのだが、因果命題として設定し、回帰分析を使って実証するという研究がほとんど。時々、被覆法則が上記の(1)(2)(3)のどれかであったりするが、本人が気づいてない場合もある。

因果命題を形成することは、思ったよりも難しいと、経済学者以外は思う必要がある。つまり、そんなに簡単に実証研究できないと思った方がいいのでは?

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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