慶応大学菊澤ゼミナールHP

私の趣味

私の著書

新制度派経済学と限定合理アプローチの本

経営哲学学会HP

« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »

2013年1月

2013年1月31日 (木)

やはりネットワーク理論は

 今日は、イノベーション研究のセミナーに出席、スピーカーはシカゴ大学の准教授(アソシエイト・プロフェッサーとアシスタント・プロフェッサーの違いは、前者は終身雇用権がある有望な若手、後者は終身雇用権のない任期付き未確定講師。確か、NYUでは5年間ぐらいの任意期だような?)。

 業績をみると、さすがに論文を一流ジャーナルに掲載している。しかも、シカゴ大学だ。この分野のエリートだと思われる。修士と博士はスタンフォードで、まさにグラノベッターのネットワーク理論を用いた研究発表だった。弟子かどうかわからないが・・・

 私は、社会学のネットワーク理論に詳しくないので、内容はよく理解できなかった。化学分野の論文を利用し、知識のイノベーションをめぐって関係性がどのように影響するのかを明らかにしようとする研究のようだった。研究者がどういったネットワーク関係をもてば、戦略的に雑誌に掲載されやすい論文が書け、知識を生み出しやすか、という夢のような話だ。

 しかし、無理やり、実証しようとするので、確率言明を用いて説明していたが、まあ「無理」でしょう。強引な感じ。ここが、社会科学のつらいところだが・・・。

 私は、どうもネットワーク理論が苦手だ。この理論は基本的に情報に関係するのだと思うが、情報が多くてもダメな場合はあるし、情報が少なくてもダメなときもある。人間にとって最適な情報量があるのかもしれないが、ひとつまちがえれば、自己矛盾言明を生み出しそうだ。とくに、確率言明=Pr(*/*)は怖い。これを用いると、自己矛盾に陥る可能性もある。

注)

確率言明が自己矛盾になる可能性があるという意味はこうです。[明日晴れる確率は90%]という言明は、厳密にいうと、[明日晴れる確率は90%であり、晴れない確率が10%である]ということになり、相互に背反することを同時に語っていることになる。それは、テストしなくても必ず真となる。つまり、そのような言明は実在とは無関係にはじめから真なのであり、それゆえ実在を対象としている経験科学的な言明ではないないのではないか?ということです。つまり、反証可能性はないのでは?by Popper.

 いや、難しかった。英語だけでなく、内容も難しかったなあ~、今度、リンカーン先生に会うが、たしかリンカーン先生はネットワーク理論だったような・・・・?

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2013年1月30日 (水)

英語論文の書き方セミナーに参加

 今日は、バークレーが外国人研究者向けに提供してくれている英語論文の書き方セミナーに参加した。私の場合、論文の書き方というよりも、英語のリスニングの勉強に参加している感覚だ。しかし、これが意外に面白かった。講師の先生も、普通ならお金をとっているような人で、話もうまかった。

 最初は、言語学で有名なセイフィア=ウォーフ仮説(言語相対性仮説)の説明からはじまり、驚くとともに、面白かった。これは、簡単にいうと、われわれの認識は言語に依存しているということ、それゆえ米国や米国文化を知るにはその前に米国英語を学ばないとだめということ、同様に、日本文化や日本を認識するには、その前に日本語を学ぶ必要があるということ、こういった仮説である。

 ついでに、レイコフのメタファーについても話をしてくれるともっと楽しかったのだが、(レイコフはまだバークレーにいるのだが・・・)・・・・

その後、徐々に具体的な書き方の話になっていた。これは、これでまた面白かった。これから、数回あるのだが、楽しみだ。

 バークレーは、ビジティングの研究者に、いろんなセミナーを提供してくれるので、非常にありがたい。また、博士課程のセミナーも充実しているので、素晴らしい。やはりレベルの高い大学はいいなあ~と思うことがある。

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2013年1月26日 (土)

アルジェリア事件と「組織の不条理」

   今回のアルジェリア事件は悲惨な事件だった。今後、日揮はどのようにビジネスを展開していくのだろうか。撤退するのか、継続するのか。まさに、トップは大変な決断に迫られるだろう。

  撤退か、継続か、どちらがいいのかわからない。しかし、日揮のトップは「組織の不条理」に陥るかもしれない。ガダルカナルの日本軍のように、合理的に考えると、もう後戻りできないのではないかと推測する。撤退したくても、合理的にできない状況に陥るのではないか。

 これまでの先輩が築きあげてきた努力とか、これまで行った多大な投資、そして政府やその他の関連会社との関係、後戻りするには、あまりにもに膨大な取引コストが発生する可能性が高い。この取引コストを計算すると、戻れなくなる。

 なんとか、この危機を乗り越えてほしいものだ。トップ並びにそれを支えるスタッフの英知に期待したい。

 

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2013年1月25日 (金)

本日は豪華なセミナーに参加

 バークレーも春学期が始まった。昨日は、博士課程のセミナーに出席し、ニューヨーク大学の研究者か博士課程の学生か、の報告を聞いた。

 そして、本日は、ティース教授発表のセミナーに参加。いろんないい刺激をもらった。まず、ティース教授の先生であるウリアムソン教授が登場し、一番前に座って聴講していた。さらに、ティース教授の弟子で「オープンイノベーション」で有名なティスブロー教授も出席していた。まさに、3世代がそろった。これだけも、十分、豪華で華やかな顔ぶれだった。

 また、今回、初めてその存在を知ったのだが、P.Spiller教授の鋭い質問にも感動した。今回、ティース教授が、「ホールド・アップ」に加えて「逆ホールド・アップ」という用語を使用したのだが、その意味がわかりにくいと鋭くかつしつこく指摘していた

 ティース教授が、これはウリアムソン教授の用語なのだがといって、まずホールドアップの例を用いて説明するのだが、今度はウイリアムソン教授が、それは「ホールド・アップ」ではないのでは・・・・と質問したりして、実に華やかだった。

 内容は、特許とライセンシングの話で、これが市場経済やイノベーションにどのような影響をもたらすのかについてなのだが、専門知識もなく、英語も弱いので、難しかった。

 しかし、今日は本当にいい刺激をもらった。雰囲気がとてもいい。下手な学会よりも、はるかにいい研究会で、いい感じだった。後で、調べたSpiller教授もすごい業績で、取引コスト理論に詳しいようだ。近づきたくなった。

 最後にひとこと。私も英語がべらべらしゃべれたらなあ~、残念!

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2013年1月22日 (火)

企業とは何か(アルジェリア事件)

  アルジェリアの事件では、日揮の社員が少なくとも10人が亡くなったようだ。本当に残念な事件だ。心からご冥福を祈る。

 今後、日揮のトップは、「企業とは何か」「企業の目的とは何か」が問われることになるだろう。もちろん、利益最大化や売上高最大化や株価最大化ではない。そんなのは、能力のない普通の人でも掲げることができる。

 ドラッカー的にいえば、日揮のトップは、いまこそトップとしての能力を発揮すべき最高の舞台がきたと考えた方いい。受けて立つべきだ。はたして、部下、従業員をまとめるような答えや方向性を示せるのだろうか?

 注目したい。

2013年1月19日 (土)

日本のため、組織のため、会社のため

  昔、オリンピックに出場するスポーツ選手に、テレビのアナウン

サーが日本国民が期待していますというと、「私は日本のためでは

なく、自分のために頑張ります」という人が多かったように思う。
 多分、「日本のために」というのは保守的で古臭い昔の日本人で

あり、「自分のために」というのは西欧個人主義的でリベラルな感

じがしたのだろう。

 しかし、私が見ていると、大抵、そのような選手は結果を残して

いない。むしろ、「日本のために」といって、逆に自分にプレッシ

ャーをかけて、長嶋茂雄ではないが、プレッシャーを楽しむ選手の

方が成績を残しているように思う。

...  私がいいたいのは、「自分のために」というのは、なんか人間が小っちゃいいんだなあ~、理論的にいうと、新古典派経済学なのだ。みんな完全合理的な人間ならば、個々人が利己的に効用最大化すれば、全体も必然的に効率的になり、ハッピーなのだという思想だ

 しかし、残念ながら、人間はみな完全合理的ではないのだ。不完全なのだ。だから集団主義的な組織が形成されるのだ。それゆえ、組織のトップになる人には、「自分のために」ではなく、「日本のために・・・」とか、「有名企業として・・・」とかいってほしいものだ。

2013年1月18日 (金)

日本発の世界大学ランキングについて

 大学の世界ランキングについて。昨年、日本では東大が最高で3

0位ということが話題になった。世界のいろんな機関が大学ランキ

ングを発表している。雑誌のエコノミスト、ニューズ・ウイーク、

・・・・・・さらに、中国の上海の復旦大か交通大学だったかわす

れたが・・・。いずれにせよ、日本の大学のランキングが低いとい

うことでショックを受けた人も多いだろう。

 東大を30位とした機関のデータ(不確か?)をみたところ、い

ろんな指標があり、東大は知名度や知的レベルのような指標は世界

でもトップクラスで100点だが、東大に来ている外国人学生や先

生のレベルが低くて、トータルで30位だったようだ。だから、秋

入学にして、優秀な外国人学生が入りやすいようにすればいいとい

うことになるのだろう・・・・・・・また、何とかして日本人のレ

ベルアップする必要があるのだろう・・・・文科省の政策だ。

 しかし、いろんな機関の世界ランキングを見ると、その指標は恣

意的な感じもする。ランキングなどいくらでも変更できそうだ。英

国のエコノミスト誌はヨーロッパの大学を上位に評価しているが、

米国の機関は米国の大学が上位だ。さらに、こういった世界ランキ

ングでは、一橋大学はほとんど入ってこない。理系を対象としてい

るのでは?という疑問もある。
...
 私が言いたいのは、これは文化政策として、文科省も日本発の独自の世界大学ランキングを発表した方がいいのではないかと思う。他の国のランキングに依存するのではなく、いまは日本も世界に対して影響力があると思うので、日本が評価する世界の大学を世界に発表した方がいいのではないかということである。インターネット上で。そうすれば、日本の大学ももっと上位にくると思うし、世界に知らせることができると思うが・・・どうなんでしょうか?他の国はみんなそうしていると思うが・・・

キュービック・グランド・ストラテジーの事例

 ポパーの世界3(哲学)理論を知っていると、いろんなことが認識できる。(彼によると、世界が三つの世界に区別できる。世界1=物理的肉体的世界、世界2=心理的世界、世界3=理論内容の世界)。私は、企業が生き残るためには、これら三つの世界に絶えずアプローチする必要があると主張してきた。このような戦略的アプローチを、拙著『戦略学』でキュービック・グランド・ストラテジーと呼んだ。

 さて、米国ヤフーでも話題になっていたことだが、寿司三昧?の社長がマグロを1.76ミリオンダラーで購入したという記事だ。英語の記事では、このお金なら、米国のどこの州でも、良い住宅が購入できるのに・・・なぜこんな高い値段で購入するのか合理的にわからないという内容だ。
 
 ところが、ポパーの世界3の理論からすると、物理的な世界1のレベルでは非常にコストが高く見えるが、世界2では社長の心理的に気持ちを盛り上げてプラス効果を生み出し、ましては日本だけではなく、世界中のメディアが社長とその会社を記事で紹介し、宣伝していることを考えると、世界3では恐ろしくプラス効果を得てることになる。

 会計的には損失だが、寿司三昧の社長の行動は、世界1+世界2+世界3の合計ではプラスの可能性が高い。しかも、世界3はもっとも次元が高いので、最終的に世界1へと影響することになる。

 このように、ポパーの世界3理論を知っていると、寿司三昧の社長の行動は、一見非合理だが、実はきわめて合理的だといえる。つまり、彼は、キュービック・グランド・ストラテジーを展開していたのだ。と、今日、米国人に説明してみたら、すこし納得していた。
 
 寿司三昧の社長はここまで考えていたかどうかはわからない。英語の記事では、日本を元気づけるために、高くても買ったという答えだったが・・・・ 

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

2013年1月13日 (日)

MBAとアカデミック

 バークレーのハース経営大学院に来て驚いたことがある。MBAの授業とアカデミックな世界との違いだ。アカデミックな世界では、いま注目のトピックの一つは「ダイナミックケイパビリティ」であり、その提唱者のひとりがデイビット・ティース教授である。

 もう古いという人もいるが、彼はそのテーマの関連で、昨年の学会では二つのセッション(ワークショップ)を担当していた。(応募制で、彼ぐらい有名だと、ほとんどパスする感じだ。しかもプログラムを見たが、彼が声をかけて参加していた教授陣は有名人が多かった。)そのことを考えると、やはり無視できない話題なのだと思う。

 さて、ティース教授は、現在、バークレーの有名教授の一人である。だから、当然、MBAの学生は、「ダイナミック・ケイパビリティ」について知っていると思っていたが、実は知らない。驚いた。せっかくバークレーにいるのに・・・と。

 理由の一つは、ティース教授はいま講義をしていないということだが、もうひとつ。やはり、MBAレベルとアカデミック・レベルは違っているということだ。MBAレベルでは、そんなことは必要ないのだ。私の感想は、これは米国人の学生もいっていたが、入学するのは結構難しいが、入ってしまえば、MBAの授業自体は難しくないということだ。だから、先生もそんな難しい話はしないのだ。

(私は、バークレーのMBAの学生自体は面白し、優秀だと思う。以前いったニューヨーク大学のスターン経営大学院も同じ、学生自体は優秀だ。)

 難しい話を聞きたい場合、やはりワークショップ、ドクターコースの学生が発表するようなワークショップにいかなければならない。しかし、ここでも就職のための研究、つまりジャーナルのための研究が多い。

 こんな状態なので、優秀な日本人も来なくなるなあ~という気もする。会社が機会をくれなければ・・・ 

  

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤研宗: 組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

2013年1月12日 (土)

研究と恋愛の関係

 研究者として若いとき、不思議な助言に会ったことがある。研究の方法論として、研究というのは、既存の研究を「批判」することからはじめる必要があるというのは、だれでも聞いたことがあるだろう。ところが、私の先生は、研究は恋愛と同じようなもので、「対象を「好き」ならないとだめだよね」といっていた。
 
 この一見矛盾するような助言をどう解釈するのか?答えは、簡単だ。嫌いな人物を批判しても面白くないし、良い研究は出てこない。広がらないし、浅い。やっぱり好きな人を批判的に研究すると、面白いことが発見されてくる。それは、「妄想」と紙一重だ。
 
 研究も恋愛と同じようなことがある。「他の人にはかわない。確かに、彼女には欠点がたくさんある。しかし、いいところもある。それは自分だけが観えるし、分かるんだ。・・・」ということを友人から相談されて、その洞察力と想像力、そしてその解釈に圧倒されることもある。
 
 そういったことをプロの仕事にまで洗練した唯一の人物がいる。小林秀雄である。彼は、批評家なのに、好きな人のことしか書いていない。ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎は、小林秀雄に自分の批評を書いてほしかったようだ。しかし、小林秀雄は書いていない。なぜか?答えは簡単だ。・・・・・
 
 社会科学者も同じところがあって、既存の理論の批判を通して矛盾を見出し、そこから彼がなぜそんな矛盾に行き着いたのかを探っていくと、答えが見えてくることもある。ポパーが自分の科学哲学(革新的だと思うが)はそれは単なるカント哲学の現代版だといっている、もしカントが今生きていたら同じことをいっているといっている。

ポパーは、カント哲学に問題を見出した。そして、なぜそのような問題にいたったのかも明確に認識した。その上で、彼の哲学が展開されているのだ。
 
 

2013年1月11日 (金)

日本の解釈学的経営学をだれが殺したか

 ヨーロッパの中世は宗教一色で不毛の時代、それに対してルネサンスは科学的で花開いた時代といわれている。これに対して、私の先生はこういっていたことがある。

 「中世の絵画をみていると、ビックリするよね。見たこともない神様やキリストやマリアをものすごい想像力で書き上げている。その想像力は、ルネサンスの人たちよりもすごいのではないの?だから、中世は不毛の時代ではないと思う」

 この同じことを、私は日本の経営学の学会に思うことがある。昔の日本の経営学会はニックリッシュ学説の解釈やバーナード学説の解釈に明け暮れていた。そして、米国帰りの野中先生がコンティンジェンシー理論と統計的手法を日本の学会に持ち込み、日本の旧解釈学的な経営学は死んだ。

 しかし、最近、あの解釈学的経営学も重要な気がしている。与謝野の源氏物語、芥川の歴史小説、ヘーゲル哲学もある意味で解釈だ。だから、解釈の意義を否定することはできないように思える。

 経営学には、今日、「科学」の名のもに計量的な研究がたくさんあり、よく論文の査読させられるが、あまり驚いたことはない。しかし、元東京大学教授岩崎武雄のカント解釈(岩崎カント哲学)には驚いた。すごい。本当に、頭のいい人だ。こちらの方がインパクトがある。

 すみません。言い方を間違えました。野中先生によって、日本の解釈学的経営学は死んだのではありません。すごい解釈をする人がいなくなったので、日本の解釈学的経営学は自滅したというのが本当のところです。こういったことをポパーいうでしょうね。

多読か精読か

  年をとったせいか、こんなことを考えることがある。「最近の若

い人は・・・・」というあれである。それが、嫌われることも十分

知っているが、それでもひとこと。「最近の若い人は本を読みすぎ

ではないか?」と思うことがある。ただし、量的に。

 昔は、先生から、ダメな本をたくさん読むと、頭が逆に悪くなる

ので、やめなさい、良い本を選んで読みなさいと言われたものだ。

では、いい本というのは何かというと、大抵、難解な本だ。へたを

したら、それを読みこなすのに、一生かかるのではないかと思う本

だ。

 若いときは、ほんとかなあ~と思っていた。たくさん本を読んで

、部屋中、本と本棚で囲まれたいそう思ったものだ。そして、いろ

んな本をたくさん読んだが、結局、私がいまでも忘れないで、バカ

の一つ覚えのように、こだわっているのは、カント、ヴェーバー、

そしてポパーの本だ。経営学の本ではない。残念。
 
 しかし、そんな自分をラッキーだと思っている。米国に来て、こ

ちらの学者とあっても、そう思うことがある。やっぱり、少なくて

も良い本を読んだ方がいいのでは?

ドラッカーをめぐる不思議

 ドラッカーに関して、かつては一般人よりも学者がドラッカーを研究し、いまは学者よりも一般人がドラッカーを読んでいる。これは、どういうことなのか?こういった疑問が日本の学会にはあるようだ。

 私の答えは、簡単だ。ドラッカーの初期の著書は、ドラッカー自身が書いており、内容が非常に難しい。「経済人の終焉」「産業人の未来」「企業とは何か」「現代の経営」どれも難しい本だ。たぶん、一般人には内容は理解できない。断言する。学者でも理解するのが相当難しい。だから、学者がアプローチしていたのだ。解釈が必要だったのだ。

 ところが、ドラッカーは長生きした。ドラッカーの生涯の敵は、ヒトラーのナチスであり、全体主義思想であった。そして、戦後は、ナチスに代わってソ連が彼の敵になった。社会主義であったが、ドラッカーはその本質を全体主義とみていた。

 そして、そのソ連が崩壊したとき、ドラッカーの生涯の敵は消えた。その後、ドラッカーの本はやわらかく、読みやすく、軽くなった。彼はコンピューター(ワープロ)を使っていなかったので、おそらくライターが代筆して、一般人でも読めるように、そしてまた売れるように書いていたのだと思う。

 こうして、ドラッカーは、学者の対象ではなくなったのだ。

 先も述べたように、ドラッカーは長生きした。どれが本当のドラッカーなのか?いろんな解釈はあるだろう。ドラッカーは啓蒙的な作家だとか、社会哲学者だとか、コンサルタントの最初の人とか、経営学を作った人とか、未来生態学者とか。いろいろ言われている。どれでもいのだろう。

 私は学者なので、初期のドラッカーこそ本物だと思っている。魅力的だ。ナチズムに支配されたヨーロッパから逃げるようにロンドン、そしてニューヨークにやってきたドラッカーは、個人の自由を奪うナチスの全体主義を批判し、米国で自由な社会の実現を望んでいた。

 自由社会を形成する方法は、いろいろあるだろう。しかし、今後は企業を中心とする産業社会がやってくると予想したドラッカーは、企業経営者に自由社会の形成を委ねたのである。つまり、自由社会を形成するのは、政治家でも、官僚でも、学者でもなく、「企業経営者である」と宣言したのである。

 だから、ドラッカーは、新しく顧客を生み出すような創造的で自由な活動をしていない企業を認めない。社会に対して自由を行使していない企業や企業経営者が、そもそも社会に対して責任など感じるわけがないのだ。自由と責任は対概念だ。

 初期の彼の本を読んでいると、彼の若くて熱いメッセイジが伝わってくる。ドラッカー著『産業人の未来』は、一度は読むべきである。

2013年1月 3日 (木)

アメリカ経営学会上の学派

 野中郁次郎先生と話をしていてわかったのだが、米国では、実はH.A.サイモン(ノーベル経済学賞受賞)を中心とするカーネギー・メロン学派の勢力が強いようだ。

 カーネギーメロン大学は、計画的に大量に博士号取得者を生み出し、学会に送り出しており、それゆえにその勢力は強いのだ。たとえば、米国経営学会の雑誌の歴代編集長はすべてこの学派出身者のようだ。

 私も、いまデイビット・ティース教授と会っていて、その影響を感じることがある。H.A.サイモンの弟子には、J.G.マーチ、O.E.ウィリアムソン(ノーベル賞受賞)、そしてデイビット・ティース、さらに、チェスブローとなっている。もちろん、進化経済学のネルソン=ウインターのウインターも関係している。

 この流れからすると、ティース教授もその流れにいるのかもしれない。サイモンは、経済学を批判して、経済人に対して経営人仮説を主張し、完全合理性に対して限定合理性を主張した人物で、合理性の概念に関して詳しく研究した人物だ。しかも、経営学を科学にするために、科学哲学にも詳しい人物だった。当初は、論理実証主義だったが、のちにポパーの批判的合理主義と言っていた。

 こういった流れに、ティース教授もいるので、「理論」と「観点」の区別には注意深く、「合理性」概念の使用についても用心深い。経営学では、唯一この学派からノーベル賞が2名出ているのだ。

 野中先生は、この学派に対抗して、「ナレッジ学派」を主張しているのだが、サイモン学派からは、経営学に学派と呼ばれるのはサイモン学派(カーネギー・メロン学派)以外に存在しないといわれているようだ。

経営学の不思議パート1

経営学者として、学会上、不思議なことがたくさんある。その一つ

 (1)経営学には、理論がないのに、仮説がたくさん作られて、すぐに検証される。そして、検証されているにもかかわらず、すぐに忘れられ、泡のように消えてゆく。

 (2)これに対して、統計的に検証されていないのに、長く残っている概念がある。「暗黙知」「コアコンピタンス」「ダイナミックケイパビリティ」「イノベーションのジレンマ」など。

みなさんは、どう思うのでしょうか?

私の答えは、こうである。

(1)経営学にはいわゆる「理論」がないので、凡人でも常識にもとづいてすぐに仮説が形成でき、検証できる。(最近は、統計ソフトが発達して利用するのが簡単になった。)つまり、大抵、「常識」に基づいて仮説を作り、それを実証しているにすぎない。しかも、そのような実証研究ですら真理はえれない。というのも、仮説「すべてAならば、bである」(すべてのカラスは黒い)は、無数の事例を検証しないと実証したことにはならないからである。ゆえに、実証不可能。

(2)いい概念は、実務者が説明に20分かかることを一言で相互理解させる。マッハ的にいえば、「思惟の経済性」があるので、みんな利用する。

2013年1月 2日 (水)

日本は経済・経営から文化へと

 米国にきて、表面的に日本企業の影響力が薄れていることに、いろんな現象から気づく。たとえば、シティバンクでキャッシュカードを作る。それを使って、ATM機を使うと、昔は、英語、日本語、ドイツ語・・・・と選択しの中に「日本語」があった。いまは、中国、韓国語はあるが、日本語はない。さみしい。ビジネススクールでも日本人の学生は少ない。・・・・・・

 ところが、米国では、日本の漫画文化、オタク文化など、こちらの方は盛んらしい。マンガを読みたくて日本語を学ぶ学生もバークレーでは多いようだ。まさに、経済経営から文化へ移行している感じだ。まさに、世界における日本の成熟度を感じさせる。

 昔は、経済経営だけだったので、日本人は「エコノミックアニマル」と揶揄されたものだ。いまでは、そんな言葉を言う人はだれもいない。

 こうした状況で、感動したことがある。ユーチューブを見ていると、フランス、イギリス、そして米国でもAKB48、ももクロ、きゃりーぱみゅぱみゅの人気だ。私の個人的な意見だが、彼女たちは、本当に日本に貢献していると思う。日本に対して、いいイメージを海外に対して発信しているように思う。まさに、「カワイイ」文化だ。

 これまで、日本といえば、経済経済、ハイテク、家電だったのが、いまは彼女たちのような「カワイイ」文化に変化しつつある。米国に住んでいる日本人の一人として、彼女たちに感謝している。日本文化の火は、まだ消えていないという感じだ。

 経済経営分野の人間として、私も頑張りたいと思った。

 

2013年 謹賀新年

新年 あけましておめでとうございます。

こちらバークレーも1日遅れで、年が明けました。今年は、英語、ダイナミック・ケイパビリティ、取引コスト理論、オープン・イノベーション、パラダイム論、メタファー、批判的合理主義をキーワードにして研究を進めたいと思います。

本年もよろしくお願いします。

« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »

2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30