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2012年6月 1日 (金)

価値合理性と目的合理性(手続き合理性)

 日本にいたときと違って、米国に来てからかなり自由な時間が取れるので、いろいろと考えることがある。もちろん、いまは英語でいっぱいいっぱいなのだが。

 

 若いときには理解できなかったが、年をとってからその映画の良さが分かったものがある。そして、同じように、若いときには、言葉として知っていたが、実感として理解できなかった言葉がある。いまも理解できるのかどうかわかないがのだが・・・

 

 それは、マックス・ヴェーバーの「目的合理性」と「価値合理性」という言葉だ。「目的合理性」とは、目的に対してそれを達成する手段が適切であるということだ。つまり、目的と手段の関係が適切につながっているのだ。恐ろしく簡単にいえば、目的が与えられており、最適な手段を探すことが重要なのだ。さらに、論理的に説明することもできる。しかし、いくら論理的に説明しても、実感としてなかなか分かってもらえないだろう。やはり、実例が必要なのだ。

もっと大変なのは、「価値合理性」の方だ。これは、難しい。これは手段とは関係なく、ある価値を追求すること自体が人間の理性に合っているということなのだが・・・・それはいったいどういうことなのか。やはり、適切な実例が必要だろう。

若いときには、これらの実例がなかなか見つからないのだ。私自身、いまもその実例が正しいという自信があるわけではないのだが、多分こういうことなのだなあと思うことがある。

それは、リーダーの行動を見ればわかる。

たとえば、いま社会に対して恥じない製品を作りづづけていきたいという理念をもった会社があるとしょう。その理念を実現する新製品Aを開発し、部品メーカーもほぼ決定し、ほぼすべて準備がそろったので、トップマネジメント会議で、3か月後に新製品を販売することを目標として民主的に決定したとしよう。

ところが、運悪く、地震が起こり、絶対的に信頼していた部品メーカが部品を作れなくなった。さて、このとき社長あるいはリーダーはどうするか。

(1)3か月後に新製品を販売するという民主的に決めた目的を達成するために、多少、信頼の置けない別の部品メーカーでもいいからとにかくできるだけ早く探し出して、予定通りに目標を達成しようとするリーダー。

(2)これに対して、もう手段はどうでもいい。独裁といわれてもいい。大事なのは3か月後ではなく、社会に対して恥じない製品を販売することであり、新製品は4か月後でも6か月後でもいい、とにかく徹底的に信頼できる部品メーカを探す。あるいは、なかったら従来の部品メーカの復旧を待つというリーダー。

もうおわかりの通り、前者(1)が目的合理的リーダーであり、後者(2)が価値合理的リーダーなのだ。と私は解釈している。別の言葉でいえば、前者はスマートで、後者はどんくさい人だ。一転して、カント的にいえば、前者は理論理性的リーダーであり、後者は実践理性的なリーダーだ。

みなさんの上司はどちらでしょうか?そして、どちらの上司を信頼しついていくのでしょうか?ヴェーバーは、前者のようなリーダーが増えてくるだろうなあ~、そしてそんな社会はさみしいなあ~と思ったのではないでしょうか?

しかし、私が数か月前に日本でお会いした社長は後者だったと思う。その方の部下は幸せだと思う。なぜならば、そのような社長は部下を決して単なる物としてあるいは単なる手段として扱わないからである。

いままでバカな話ばかりしてきたので、たまには違うことを書いてみました。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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●上記の『組織の不条理』の文庫版

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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