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2012年5月 2日 (水)

トーマス・クーンのパラダイム論の魅力

 いまある研究を進めているのだが、何かの縁でトマス・クーンのパラダイム論に行き着いた。改めて調べてみると、彼は私がいまいるUCバークレーでパラダイム論を展開してたことに驚いた。

 しかも、彼は科学の歴史の研究者であったが、運が悪かったのか、そこに所属できず、科学哲学の学部の所属になってしまったようだ。それが運命で、そこになんとファイアーベント(このときまだ彼はポパーリアンだったようだ)がいたのだ。

 こうして、クーンはあの有名な「パラダイム」論を展開することになる。選ばれた人は運命の糸にひかれるような人生をたどるものだ。

 

 クーンを知らない人もいるので、簡単に紹介したい。1950年代、当時は科学哲学は全盛時代だ。中でも、K.R.ポパーは有名だ。彼は、科学、とくに科学的理論は経験によって反証されるが、次にその反証事例をも説明する新しい理論を展開することによって、真理に接近することになるという考えを示した。したがって、ある理論が科学かどうかを決める基準は「反証可能性」つまり経験的に批判的なテストができるかかどうかだといった。

 これに対して、クーンは科学の歴史はそのような合理的な発展をしてしていない。ある理論から次の理論に移る場合には科学者集団の非合理的な要素も加わって移行することになる。もしかしたら、理論の提唱者の人格がものをいうこともあるかもししれないということだ。つまり、そこに価値観、社会的なルール、さらに実験装置のレベルなども関係しているのだ。理論とこのような非合理的な要素のセットを「パラダイム」と彼は呼んだのだ。こうしたパラダイムの移行は合理的ではなく、その方向も真理に接近しているかどうかわからないといったのだ。パラダイムとパラダイムは共役不可能で、合理的に優劣をつけられないというのだ。

(時間がないので、後で内容をもっと正確に修正します)

 さて、もちろん、私はいまでも方法論的にはポパーリアンなのだが、経営学の研究をしていると、クークの現実的な非合理的なパラダイム論もとても魅力的だ。新しい研究については、また別の機会に紹介したい。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

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●上記の『組織の不条理』の文庫版

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

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菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)

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