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2011年12月 7日 (水)

続ダイナミック・ケイパビリティについて

前回、ダイナミック・ケイパビリティについて書いたが、今回は、デビット・ティースのダイナミック・ケイパビリティがどのような流れで登場にしてきたのかについて説明したい。

それは、以下の二つの流れから登場し、そしてまた注目されているのだ。

(1)新制度派経済学からの流れ

ロナルド・コースによって、世の中には市場という資源配分システムだけではなく、組織という資源配分システムも存在することが説明された。そして、そのうちどのシステムを選択するかは「取引コスト」で決まるとされた。

このコースの議論をさらに洗練し、取引コストの経済学として体系化したのは、オリバー・ウリアムソンである。ヴィリアムソンもまた、取引コスト節約原理にしたがって、市場か組織か長期契約かが選択されるとした。

しかし、組織を形成したり、提携したりすのは、ぞのときどきの状況を認識し、資源を再構成する経営者の能力であり、実は市場か経営者能力かであり、この経営者の能力のことをダイナミック・ケイパビリティといったのが、ティースなのである。この方向性は、ノーベル経済学賞の系譜である。

(2)経営戦略論からの流れ

経営戦略論の創始者であるマイケル・ポーターは、企業の戦略的行動は企業が置かれている産業の競争状況あるいは参入しようとしている産業の競争状況によって決定されるという考え方を示した。

しかし、この考えでは同じ状況に置かれている企業群は同じ戦略行動をとることになる。しかし、実際には、同じ産業内に置かれる複数の成功的企業は相互に異なる行動をしていた。このことは、企業の戦略的行動は状況によって決定されるわけではないということだ。

そこで、登場してきたのが、資源ベース理論だ。企業の戦略的行動は、企業が保有する固有の資源(DNAというとわかりやすいかもしれない)に基づいて決定されるという考えだ。たとえば、フィルムめメーカーの富士フィルムが最近、化粧品業界に進出し、業界を驚かせた。これは、フイルムと化粧品に共通する技術、コラーゲンを扱う技術が同じだったからである。これが、固有の資源となって、行動した結果だということである。

しかし、この資源ベース理論も、状況が大きく変化しなければ有効な考えだが、やはり状況がドラスティックに変化する場合、固有の資源では持続的な競争優位を維持できない。

そこで、既存の固有の資源群を再構成する(オーケストレーションあるいはトランフォーミングあるいはリコンフィグレーション)能力が必要となる。特に、経営者の能力が必要となる。この能力が、ダイナミック・ケイパビリティだ。

現在は、多くの経営学者が(2)の方向から、デイビット・ティースのダイナミック・ケイパビリティに関心を持っているが、この方向では、ノーベル経済学賞はとれないかもしれない。

David J. Teece: Dynamic Capabilities and Strategic Management

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