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2011年12月

2011年12月25日 (日)

派閥の力学 『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』について

今月号の『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』で、「派閥の力学」という論文を書いた。

日本陸軍の皇道派と統制派を事例にして、取引コスト理論で派閥の本質を分析した。経済学的な観点からすると、派閥は効率的な意思決定システムだ。しかし、それが存続するかどうかは、その正当性にかかっているということを論証した。

この論文については、ダイヤモンド社の編集部のブログに、私以上にうまく説明してくれているので、ぜひ以下のブログを読んでほしい。

ダイヤモンド社HBR編集部のブログ

http://www.dhbr.net/blog/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/1975/

その他、多くの人から面白かったというご意見を、直接あるいはお手紙でもいただいた。とても感謝している。

みなさん、派閥は悪いものという常識に挑戦した面白い論文だったという点を評価していただいているようだ。こういった評価は、学者としてとてもうれしいものだ。

: Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

●また、この号で宣伝されている拙著『戦略学』も地味ではあるが、たくさんの方に読んでいただいているようだ。意外にたくさんの方がブログなどで紹介しているているのには驚いている。

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

2011年12月23日 (金)

キュービック・グランド・ストラテジー(『戦略学』)について

拙著『戦略学』ダイヤモンド社で、私は現存する三つの世界に対して立体的にアプローチする戦略のことをキュービック・グランド・ストラテジーと呼んだ。そして、このような立体的大戦略によって企業は21世紀を生き残れることを説明した。

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

この考えは、思った以上に、地道に広がっているように思える。というのも、このキュービック・グランド・ストラテジーのフレームワークを利用した論文が登場しているからである。

●明治大学の折谷先生の論文

https://mrepo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/10992/1/shogakuronso_92_3_31.pdf

●千葉経済大学の粟沢先生の論文

http://www.tku.ac.jp/kiyou/contents/economics/269/125Awasawa_Takashi.pdf

●慶大SFCの伊賀先生

http://interaction.sblo.jp/article/34507978.html

●菊澤の論文

http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=27707

関心のある人はぜひとも読んでほしい。

2011年12月22日 (木)

『経営哲学の授業』が発売に!

あっという間に、12月23日になる。この日が、『経営哲学の授業』(PHP)の発売日となる。関心のある人はぜひとも購入してほしい。

経営哲学学会: 経営哲学の授業

経営哲学学会: 経営哲学の授業  1900円

PHPのホームページでも宣伝していただいている。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-79894-3

●PHPのHPの解説

「日本企業の真価が、いま問われている。オリンパス、大王製紙に見られるような一部経営陣の不始末が続出するなか、日本企業の経営はこれからどうなるのか。多くの経営者にとってその構築・実践がもはや必須といえる「経営哲学」への理解を、より深めるための格好の手引書が本書です。若手からベテランまで30人以上もの経営・経済学者による「誌上授業」を掲載。「経営哲学」という視点からみた重要経営者・キーワードを厳選して、その解説をおこなっています。また経営学者として世界的な活躍を続ける野中郁次郎氏、日本経営史の重鎮・由井常彦氏への、菊澤研宗氏(経営哲学学会前会長)によるインタビューも収録――野中郁次郎が語る「いま哲学に何ができるのか」、由井常彦が語る「日本の経営者にとっての『経営哲学』」――。「経営哲学」研究の国内における先駆的存在として活動を続ける経営哲学学会編集による本書が、日本企業の経営の未来に迫ります。        」

: Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

: 中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

2011年12月21日 (水)

北朝鮮の解説で思った意味論的矛盾

 前にも、このブログで書いたことがあるのだが、論理実証主義との関係で「構文論」と「意味論」という研究がある。

(1)大雑把にいうと、構文論とは言明と言明との間の論理的関係を研究する学問である。たとえば、「2という数字は1と1を加えた数字である」という命題は無矛盾である。

(2)意味論とは、言明と実在との関係を研究する学問である。たとえば、「机」という言葉と実際に机が対応するのかどうかを研究することである。

ラッセルは、(2)の意味論に関連して「この命題は5文字である」という言明は意味論的に矛盾しているといった。というのも、この言明は11文字から構成されているからである。

長い前置きとなったが、2日前、キムジョンイル氏が亡くなったことが報道された。あまりにも突然だったのか。テレビ局も、専門家とコンタクトをとるのが大変だったのだろう。

4チャンネルの日本テレビには見慣れない慶大の若い先生がでていた。テレビの画面には、慶大専任講師と書いてあったので、若い人だと思う。とにかく、めずらしいと思った。

そして、こう解説していた。

「後継者は若い3男のキムジョンウン氏になるだろう。問題は、彼が若くて実績も経験もないことだ。果たして、実力があるのかどうか、そこが問題だ。」・・・・・

私は、悪い人間なので、その解説内容をそのまま若いあなたにもいいたいいと思ってしまった。つまり、その人の解説には、意味論的な矛盾があると思ってしまったのだ。

年をとると、ついついこういった見方になってしまう。反省しなければならない。しかし、こう思ったのは私だけだっただろうか?

では、次の命題をどう思うか?この命題は正しいのかどうか。

「うそつきのクレタ人が私はうそつきだといった」

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

2011年12月20日 (火)

橋本大阪市長について

私は大学時代からノンポリ(ノンポリティクス)だったので、それほど政治には関心がない。それでも、最近、大阪市長となった橋本市長には少し興味がある。魅力的だ。

マスコミがいろいろと取り上げているし、いろんな有名人が彼をいろいろと専門的に評価し、論評している。その政治手法はすばらしいとか、彼こそが本当の政治家だとか、日本を変えてくれる人物だとか、彼の構想はすばらしいとか・・・・・・・

とにかくいろいろとある。

最近、偶然、彼のインタビューをテレビでみた。そのとき、ふと思ったことがある。政治の専門家がいろんな評価をしているが、ノンポリの私の意見は単純だ。それは、印象といってもいい。

久しぶりに頭のいい人が政治家になったんだなあ~ということだ。いまはわからないが、昔、小学校や中学校では頭のいい子が選ばれてクラスの会長になったものだ。まさに、そういった何か懐かしい感じがした。

比較して申し訳ないが、今の防衛省大臣など、なんとなく頭が???、たぶんたくさんの書類に目を通しても十分に理解できないのでは?それに対して、橋本市長などは短時間で、いろんな書類に目を通してどんどん処理できるだろうなあ~と思ってしまう。

受験戦争が激しくなると、頭のいい人間の質が変化する。中学までは、心身っともに優秀だった人間が生徒会長になる。しかし、高校生になると、受験があるので、大抵、生徒会長にならないものだ。みな悪賢くなる。逆に、受験に有利になると思って、生徒会長になるものもいる。いずれも、本質は同じだ。名誉、名声、お金、他人の目を気にして生きる他律的な存在なのだ。

それにもかかわらず、自分の受験勉強も顧みずに生徒会長になる人物がでてきた。それが橋本市長である。そんな自律的で人間主義的なところに、私は魅力を感じる。

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

2011年12月18日 (日)

「銀だこ」の社長のことを「人間主義的」というのだ!

「銀だこ」は縁もゆかりもない仙台石巻に本社を移転したようだ。

●銀だこ社長縁もゆかりもない石巻へ

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111218-00000014-pseven-soci

一人の東北出身の社員とのあたたかい人間関係から、銀だこの社長が石巻に本社移転を決定したようだ。すごいことだ。なかなかできないことだ。

まさに、このような社長の態度や決定のことを人間主義的というのだ。すばらしい。人間としての生き方をわれわれに示してくれているようだ。

いろんな学者やコンサルが「人間主義的経営」とかなんとかいうが、その意味を本当にわかっているいる人は少ない。

人間主義というのは、カント的にいえば、動物的ではないということだ。動物的ではないということは、刺激反応的に行動しないということだ。

たとえば、お金に刺激されて、お金をもうけるために、ビジネスをするということ。おいしい食べ物のために、行動するということ。美人が現れたので、刺激反応して声をかけてしまう。

これらは、その行動の原因が自分の外にある。自分自身の他にあるという意味で、他律的な行動なのだ。こういった行動は動物でもできるので、人間主義的とは言わない。

人間主義的な行動とは、自律的な行動であり、その原因が自分の外にではなく、自分の中にある行動のことである。お金儲けとは無関係に、私は東北でビジネスをやりたい。環境のよい仕事場はなくても、私は自分の意志で仙台で仕事をしたい。そういう行動のことである。

このような自律的な行動は動物にはできないのだ。こういった自律的な行動を示してみせてくれているのが、銀だこの社長だと思う。

そのような人間は100%幸福なるという保証はない。しかし、少なくとも幸福なるということを望むことは許されるということ、これがカントの結論であった。私は、銀だこが窮地に陥ったときには、何かしてあげたいという気持ちになったのだが・・・

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤 研宗: 組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

2011年12月14日 (水)

本当に名店だったのか?

 昨年、関西の三田会で講演を行った。私の大学の後輩からの依頼だった。神戸に着いたとき、彼が出迎えてくれた。講演まで時間があったので、街の中を歩こうということになった。実は、私は神戸に詳しくないのだ。学会で数回きたのだが、直接、学会会場の大学に行って帰るだけだったからである。

 

 歩いていて、少し疲れたので、私の後輩がコーヒーでも飲みましょうといった。ケーキとコーヒーの有名な店を知っているというので、そこにいった。

 

 その店の前にきたとき、良い感じだった。建物の感じが洋風で、いかにも神戸らしかった。さっそく中に入った。

 

 マックのように、カンウンターがあり、そこでまず店員にケーキセットを注文する。え・・・高級な店なのに、なぜカウンターなのか、・・・・一瞬とまどった。しかし、名店らしく、店員はメイド風のコスチュームだ。

 気をとりもどして、カウンターにあるメニューをみた。おいしそうなケーキがコーヒーとセットになっていた。値段をみた。驚いた。安いのだ。

 どのケーキも美味しそうな感じで写真でメニューに載っている。迷った。しかも、コーヒー付きときだ。後輩も「どうだ!」という感じだった。

 

 やっと決めた。お金を支払って、カウンタ-で待つ。ケーキは後で、テーブルに運ぶので、コーヒーだけを持っていってくださいといわれた。テーブルも椅子も高級そうな洋風の感じだ。

 そこで、コーヒーができるのを、カウンターで待っていた。

 待っていたら、「ガーガー・・・」という音が聞こえてきた。どこかで、聞いたことのある音だと思った。そして、その「がーがー」という音がやがて何かわかった。ときどき家族でいくファミレスのあのおなじみの音だ。

それはガストやジョディ・パスタなどにあるドリンク飲み放題のコーヒーメーカーだ。なんとその名店でしかもメイド風の店員が後ろを向いてそれでコーヒーを作っているのだ。もうこちらから丸見えだ。

 

 私は、自分の目を疑った。ほ・・本当に本当に名店なのか・・・・・

一歩、譲歩して、あの飲み放題のコーヒーメーカーでコーヒーを作ってもいい。せめてお客の見えないところで作ってほしいものだ。目の前で、がーがーやられたらたまったものでもない。

 この店をでたとき、私は後輩に「本当に名店か、あんな名店があのるか、ありゃ迷店だ」などとブツブツ文句をいい続けた。

今日もファミレスでセルフサービスの飲み放題のコーヒーを飲んだが、その度に、あの神戸の名店を思い出す。「本当に名店だったのかなあ~たしかに建物は良かったが・・・・」

不条理だ。

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

 

 

 

 

2011年12月11日 (日)

ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューでの私の論文

12月10日『ハーバード・ビジネス・レビュー』は失敗の本質特集の第二弾だ。ここに、私の論文「派閥力学」が掲載されている。

この論文の重要点は、以下の2点である。

(1)派閥に関する山本七平の主張に挑戦していること

(2)派閥を取引コスト理論で分析していること

派閥がどのように取引コスト理論で分析されるのか。関心のある人はぜひ読んでほしい。

: Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 01月号 [雑誌]

●また、この号で宣伝されている拙著『戦略学』も地味ではあるが、たくさんの方に読んでいただいているようだ。意外にたくさんの方がブログなどで紹介しているているのには驚いている。

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

●さらに、なぜ日本軍が負けるとわかっていた戦争に向かっていったのか。その不条理を取引コスト理論で分析したのが、以下の中央公論別冊での私の論文である。関心のある人は読んでほしい。

: 中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

 

2011年12月 8日 (木)

新卒一括採用の消滅!? ユニクロが検討する「大学1年生採用」の衝撃

ユニクロが大学1年生から採用すると発表し、衝撃が走っている。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111208-00000301-playboyz-soci

これをどのように考えるか。特に、大学関係者としてどう思うか。教科書的なあるいは優等生的な考えを示そう。教科書的とは?優等生的とは?と思うかもしれない。それは、一面的に考えずに、いつも多面的に良い点と悪い点を述べることだ。

(1)悪い点

受験勉強してきた学生にとって、やはり大学という4年間は休息が必要であり、この時期には受験勉強とは違ってがつがつした勉強はしない。学部や専門とは異なっていてもいい。経済学部や商学部の学生でも哲学書を読む学生がでてくるものだ。

学問というものは、予想以上に深くて広いものだ。経済学や経営学を真剣に学ぶと、いつのまにか哲学に行きつくものだ。あるいは、物理学や数学の世界に行くときもある。さらに、生物学(進化論)にたどりつくこともある。

また、恋愛することも大事だ。そして、ゼミやクラブを通して、人間関係を学ぶのもこの時期だし、本当の友人にめぐりあえるかもしれない。そこで、実践的な倫理というものを学ぶかもしれない。というのも、大学での人間関係はビジネスとは関係ない関係だからだ。

さらに、大学には同じレベルの人間が同じ場所で議論できる希少な場でもある。私は学生にいつもいうのが、これだけたくさんの優秀な人間が一つの場所でともに議論できるという機会は少ないので、大切にしてほしいものだ。就職すれば、レベルのまったく異なる人たちとの場しかないだろう。だから、本当に貴重な場なのだ。

私は、このようなことをドラッカーは言っていると思う。大学1年生から、金儲けの世界で頑張れなどといっているとは思えない。柳井社長は、本当にドラッカーを読めているのかな?

(2)良い点

私は日ごろから日本の大学数は多すぎると思っている。大学1年生から就職活動をする学生が多い大学はもう大学の機能を失う可能性がある。そうすると、そういう大学は存在意義がないので、消滅することになるだろう。

いまでも、そのような大学はたくさんあるのだ。そんな大学に4年間もいるよりも、早く就職した方がいい学生はたくさんいるのだ。へたに大学を卒業すると、プライドだけが高くて、就職できないのだ。また、大学も淘汰されないために、がんばると思う。

さて、ここから、上記の(1)と(2)からさらなる答えを出そうとするのが、もっとも頭の良い人だ。みなさんは、ここで終わるか。あるいは、さらに一歩すすんで、(1)と(2)が矛盾しないような結論(3)にたどりつけるだろうか。

それは、みなさんにお任せします。もちろん私は(3)へと進みますが・・・・

菊澤 研宗: 「命令違反」が組織を伸ばす (光文社新書)

菊澤 研宗: 「命令違反」が組織を伸ばす (光文社新書)

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

2011年12月 7日 (水)

続ダイナミック・ケイパビリティについて

前回、ダイナミック・ケイパビリティについて書いたが、今回は、デビット・ティースのダイナミック・ケイパビリティがどのような流れで登場にしてきたのかについて説明したい。

それは、以下の二つの流れから登場し、そしてまた注目されているのだ。

(1)新制度派経済学からの流れ

ロナルド・コースによって、世の中には市場という資源配分システムだけではなく、組織という資源配分システムも存在することが説明された。そして、そのうちどのシステムを選択するかは「取引コスト」で決まるとされた。

このコースの議論をさらに洗練し、取引コストの経済学として体系化したのは、オリバー・ウリアムソンである。ヴィリアムソンもまた、取引コスト節約原理にしたがって、市場か組織か長期契約かが選択されるとした。

しかし、組織を形成したり、提携したりすのは、ぞのときどきの状況を認識し、資源を再構成する経営者の能力であり、実は市場か経営者能力かであり、この経営者の能力のことをダイナミック・ケイパビリティといったのが、ティースなのである。この方向性は、ノーベル経済学賞の系譜である。

(2)経営戦略論からの流れ

経営戦略論の創始者であるマイケル・ポーターは、企業の戦略的行動は企業が置かれている産業の競争状況あるいは参入しようとしている産業の競争状況によって決定されるという考え方を示した。

しかし、この考えでは同じ状況に置かれている企業群は同じ戦略行動をとることになる。しかし、実際には、同じ産業内に置かれる複数の成功的企業は相互に異なる行動をしていた。このことは、企業の戦略的行動は状況によって決定されるわけではないということだ。

そこで、登場してきたのが、資源ベース理論だ。企業の戦略的行動は、企業が保有する固有の資源(DNAというとわかりやすいかもしれない)に基づいて決定されるという考えだ。たとえば、フィルムめメーカーの富士フィルムが最近、化粧品業界に進出し、業界を驚かせた。これは、フイルムと化粧品に共通する技術、コラーゲンを扱う技術が同じだったからである。これが、固有の資源となって、行動した結果だということである。

しかし、この資源ベース理論も、状況が大きく変化しなければ有効な考えだが、やはり状況がドラスティックに変化する場合、固有の資源では持続的な競争優位を維持できない。

そこで、既存の固有の資源群を再構成する(オーケストレーションあるいはトランフォーミングあるいはリコンフィグレーション)能力が必要となる。特に、経営者の能力が必要となる。この能力が、ダイナミック・ケイパビリティだ。

現在は、多くの経営学者が(2)の方向から、デイビット・ティースのダイナミック・ケイパビリティに関心を持っているが、この方向では、ノーベル経済学賞はとれないかもしれない。

David J. Teece: Dynamic Capabilities and Strategic Management

David J. Teece: Dynamic Capabilities and Strategic Management

  • 経営哲学学会: 経営哲学の授業

    経営哲学学会: 経営哲学の授業
    経営哲学の本がやっとできました。面白いですので、ぜひ買ってください。 (★★★★★)

  • : 中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

    中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

  • 2011年12月 6日 (火)

    ダイナミック・ケイパビリティについて

    私は、来年、カリフォルニア大学バークレー校で、デイビッド・ティース教授に会う予定だ。いま、経営戦略論分野でもっとホットな話題は、彼が提唱している「ダイナミック・ケイパビリティ」という概念だ。

    こういった理由で、いま彼の論文や本を読みあさっているのだが、内容的にはまだ明快な理論にまで至っていない。まだ、Viewの段階だ。

    しかし、だからこそ面白いのだ。いかにして、この概念を理論的に解釈して、新しい展開を進めるのかが、勝負なのだ。私もいまあるアイディアを持っているのだが、まだ全体として公表できるまでにはなっていない。

    そのうち、ダイナミック・ケイパビリティに関する私の解釈についてお話してみたいと思う。

    David J. Teece: Dynamic Capabilities and Strategic Management

    David J. Teece: Dynamic Capabilities and Strategic Management

    ●最近、注目されているダイナミック・ケイパビリティの本

     

    さて、あっというまに12月だ。12月10日『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』から昨年に引き続き、新・失敗の本質の第二弾が発売される。私の論文は派閥に関する内容のもので、山本七平の考えに挑戦している内容となっている。関心のあるい人はぜひ購入してほしい。

    ●ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューの内容の予告

    http://www.dhbr.net/next.html

    ●編集長のブログ

    http://www.dhbr.net/blog/date/2011/12/02/

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

    菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

    2011年12月 3日 (土)

    12月10日『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』に拙著論文が掲載

    12月10日に発売される『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』に私の論文が掲載されます。昨年の『失敗の本質』の第二弾です。執筆メンバーもほぼ同じで、野中郁次郎先生、山内先生、戸部先生などなどです。

    私の論文は、派閥に関する論文「派閥の力学:皇道派と統制派の確執」です。皇道派と統制派の事例を通して、(1)なぜ派閥は発生し、(2)なぜ存続するのか。これを取引コスト理論を用いて説明しています。

    関心のある人はぜひ購入してください。DHBR編集部の企画力はすごいと思います。今回の号もとても華やかです。発売が楽しみです。

    ●ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューの内容の予告

    http://www.dhbr.net/next.html

    ●編集長のブログ

    http://www.dhbr.net/blog/date/2011/12/02/

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    : 中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

    中央公論別冊 日本国の「失敗の本質」 2012年 01月号 [雑誌]

    菊澤 研宗: 「命令違反」が組織を伸ばす (光文社新書)

    菊澤 研宗: 「命令違反」が組織を伸ばす (光文社新書)

    菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

    菊澤研宗: なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

    2011年12月 1日 (木)

    経営哲学学会『経営哲学の授業』PHP研究所から発売まじか

    ここ3年間かかってついに、『経営哲学の授業』という本が、PHP研究所から発売されます。12月24日か25日頃には各書店に並びます。値段は1900円です。この本を完成するのに、3年はかかりました。

    この本は、私が会長を務めていた経営哲学学会の主要な先生に登場していただき、それぞれのテーマ(経営者の哲学、経営学者の哲学、経済学者の哲学、その他)で書いてもらったもので、日本にはこれまでなかった内容の本となっています。

    リーマンショック以降、単なるお金もうけだけではだめだと思った方は多いと思います。では、どうすればいいのか。ぜひこの本を手にとってほしいと思います。

    ドラッカーは何をいっているのか。ドイツのニックリシュは何を語っているのか。ハイエクは何を示唆してくれているのか。バーナードはどういっているのか。松下幸之助は何を示してくれているのか。ジャック・ウエルチなら、どうしたのか。などなど・・・・・・・・・・・

    さらに、巻頭には、経営哲学の権威である野中郁次郎先生にも登場していただきました。そして、経営史の権威である由井先生にも登場していただき、すばらしい内容となっています。

    アマゾンで予約がはじまりましたので、ぜひ購入してもらいたいと思います。経営哲学学会がみなさんにささげる英知で満ちた一冊です。

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    経営哲学学会: 経営哲学の授業

    経営哲学の授業

     

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