吉田所長 命令違反が組織を伸ばす
東電、福島原発の吉田所長のはじめてのインタヴューが衝撃的だ。「死ぬかと思ったことが、何度かあった。」
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20111112-OYT1T00676.htm
今回の震災は、たくさんの悲劇があった。被災者の方々は本当に大変だったと思うし、いまも大変な状態にある。とくに、両親を亡くした子供たち。心配だ。
しかし、この震災を通して、われわれはいろんな発見もした。カントがいうように、やはり人間には他律的な側面だけではなく、自律的な側面があることをはっきり認識できた。人間はお金や物だけで行動するわけではないのだ。自分の外にある原因にしたがう他律的な存在ではないのだ。お金とは無関係に、あるいは上司の命令とは無関係に自律的に行動できるのだ。
とくに、吉田所長の勇気ある命令違反は注目すべきである。かつて、私は光文社新書から『命令違反が組織を伸ばす』という本を書いた。多くのひとたちは、この本の内容に関して懐疑的だった。しかし、人間は完全ではないので、常に上からの命令が正しいとはかぎらないのだ。そのときのためにも、日ごろから自律的に行動しておく訓練が必要があり、ときには命令違反する覚悟が必要なのだ。もちろん、その行動は自律的で、その行動の原因は自分にしかない。したがって、失敗したときには、その行動に対して責任をとる覚悟が必要なのだが・・・
菊澤 研宗: 「命令違反」が組織を伸ばす (光文社新書)
東電の吉田所長の行動の意味を理解するために、読んでもらいたい
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