震災復興政策は戦略学で展開した多元的立体的アプローチ(CGS)をお願いしたい。
原発事故のことばかり書いてきたが、震災復興政策について、ひとことコメントしたい。
宣伝のように、本当に、申し訳ないのだが、ちょうど拙著『戦略学』ダイヤモンド社が増刷されることになったので、思い出した。
今後、震災復興をめぐって経済政策(もちろん別の政策もある)が展開されるだろう。私は、経営学者として、戦略論的なアプローチをお願いしたい。それは、多元論的なアプローチだ。
それは、拙著『戦略学』や『戦略の不条理』を読んでもらえると、わかるのだが、次の三つの世界観にもとづく多元的な立体戦略だ。ピカソのキュビズムをイメージにして、キュービック・グランド・ストラテジー(CGS)と名付けた。
(1)物理的世界:肉体、物質の世界。五感で存在を感じられる世界。
(2)心理的世界:感情、心情、本を読んでいる状態。考えている状態。暗黙知の世界
(3)知性的世界(理論内容の世界):本の内容、理論の内容、知識、情報、理念、価値、人間の知性によってその存在が理解できる世界。
これから、震災にあわれた方々を救済するには、これら三つの世界のアプローチが必要だ。
(1)物資、食事、仮設住宅、資金などなどが必要だ。
(2)心のケア、信頼感、家族愛など、友達関係、後で出てくる問題だ。
(3)希望に満ちた理念、共通して理解できる先行きの展望、共有できる考え方などなど、いまは思いつかないが・・・・
われわれ人間を取り巻く世界はこれら三つの世界であり、これらは相互作用しているのだ。相互作用して相互に成長しているのだ。
この三つのアプローチのどれ一つ欠けても戦略は合理的に失敗する。政府は(1)物質的世界だけをアプローチしてもだめなのだ。(2)と(3)の世界もアプローチしないと、(1)の世界で合理的に政策を展開しても、復興はしないのだ。
むしろ、三つの世界には階層があり、特に知性的世界がもっとも高次なのだ。この知性的世界へのアプローチは非常に重要なものとなる。それが、実は心理的世界や物理的世界での復興を生み出すのだ。物理的世界でのアプロ-チだけでは、心理的世界と知性的世界での変化は期待できないのだ。
復興戦略の不条理に陥らないようにお願いしたい。
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