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2010年11月23日 (火)

ドラッカーマネジメントの魅力

 ドラッカーのマネジメントの魅力は、たくさんあるだろう。私は、以下のようなカントのアンチノミーあるいはカント的ジレンマを厳密ではないが、解決してくれそうなところに魅力を感じている。

(1)人間は他律的なので、どうしても自分の外にある原因、つまりお金儲けに走りたくなる。金儲け主義の経営を展開したい。功利主義的な経営を展開したい。しかし、これでは目の前のえさに食らいつく動物と同じだ。

(2)人間は自律的なので、聖人君主(神)のように、金儲けはやめて、倫理的に人徳のある生き方をしたい。それゆえ、道徳的で人徳のある企業経営をしたい。しかし、これでは何か嘘っぽい。やはり、おカネがないとだめかもしれない。

このジレンマを感じる少し賢い経営者は多いのかもしれない。これに対するドラッカーの答えはこうだ。

(3)経営者は人間として生まれたからには、利益最大化ではなく(1)、あえて自分の自由意思を行使し、自律的に社会に働きかける「べき」である(2)。新しく顧客を生み出すような、新しい市場を生み出すように能動的に対応す「べき」である。その結果、利益が生まれ、そして新しい産業社会が形成されることになるのだ。

だから、はじめから動物のようにお金を儲けるとか、はじめから神様のように倫理的な行動するとかではなく、何よりも人間として生まれたからにはまず自由意志を行使すること、そしてその結果に対して責任をもつことが必要なのだ。

 このように、動物的でもなく、神のようにでもなく、人間として生きれば、その結果がどんなものであれ、だれにも恥じることもないし、神様すら叱ることもないだろうということだ。

 そして、これがカントの答えでもあったのだ。

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