尖閣諸島問題は経済問題から政治的問題へ
尖閣諸島をめぐる領有権(所有権)の問題は、これまで所有権理論的に説明されうる状況だった。
つまり、所有権理論によると、所有権を明確にすると、その財を利用して発生するプラス・マイナス効果が明確に所有権者に帰属されるので、所有権者はマイナスを避け、プラスがでるように財を効率的に使用する。しかし、所有権を明確にするにはコストがかかる。この明確化に関わるコストがあまりにも高い場合には、所有権を明確にしない方がより効率的であるという理論である。
この理論によると、尖閣諸島をめぐる所有権が明確ではないと、尖閣諸島近海の石油資源を有効に利用できない。しかし、それを有効に使用するために、所有権を明確化しようとすると、近隣諸国と戦争が起こりかねない。その所有権の明確化コストはあまりにも膨大に大きいだろう。それゆえ、日本は必ずしも強硬に所有権を主張してこなかった。むしろ、あいまいにしてきた。それが、経済学的に効率的だったのだ。
しかし、このような経済原理を無視して動き始めているのが、尖閣諸島問題だ。もはや経済学的な問題を超えて、いまや非合理的な軍事や政治的な問題となりつつある。
理論や論理が強い現在の内閣は、所有権理論的に問題を経済理論的に理解していたのかもしれない。しかし、その次元はもう終わっているのだ。
いまや、問題はいくぶん非合理的な政治的圧力や暴力の次元に移行しつつあることに注意する必要がある。大変な事態である。日本、がんばれ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/diplomacy/443985/
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