ポパーの世界3の自律性と怖さ、そして怒り
ポパーの世界3の理論は、知性的世界の怖さを教えてくれる。
ポパーによると、われわれを取り巻く世界は、物理的世界1、心理的世界2、そして知性によってその存在が理解できる知性的世界3から成っているという。
それぞれの世界は自律的である。つまり、三つの世界は相互に異なるのだ。言いかえると、人間の心理2によって、知性的世界3や物理的世界1を完全にコントロールできないのだ。それぞれ、自律的だからだ。世界3も世界1も人間個人が予期せぬ内容を含んでいるのだ。
さて、知性的世界とは、毎回いうように、人間の5感ではなく、知性によって理解できる世界である。それは、理論の内容の世界、文学、小説、技術、価値、観念の世界である。
注目すべきは、この世界には誤った観念、間違った理論、間違った議論も含まれるということだ。(この点で、プラントの真なるイディアとは異なるし、ヘーゲルの神、真なる絶対的精神とも異なる。)
ある人間は誤った議論を正しいものと理解するかもしれない。また、ある人はそこに別の価値を見出すかもしれない。あるいは、ある人はその誤った議論や小説を鵜呑みにして、激情し、過激な行動にでるかもしれない。
だから、知性的世界3は自律的であり、そして世界2、世界3と相互作用するために、怖いことが起こりうるのだ。つまり、世界3での誤解が、世界2で人間を心理的に激情させ、世界1の物理的道具を使って、殺人を犯す可能性があるのだ。
世界3を急速に大きくしたのはインターネットだ。それは、真理、誤解された論証、問題、誤りった議論、誤った主張、そして特定の人を非難する言明などを含んでいる。それゆえに、相当慎重に対処する必要がある。
それにもかかわらず、私の近くにいる事務の人々は、あまりにも安易にわれわれの情報を扱っていることに、怒りを覚える。しかっりしてくれ!
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