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2010年2月 9日 (火)

キリンとサントリーの統合失敗の分析:戦略の不条理

◆この問題は難しいので、事実が分かる度に、分析内容を変更しますので、ご注意ください◆

 キリンとサントリーの統合問題についてだが、結局、失敗に終わりそうだ。このような帰結になることは、大抵の人々は想像していたのではないだろうか?そもそも企業風土、組織文化が全く異なる会社だからだ。

 しかし、このような単純な説明で満足するのは危険だ。このような説明では、今回の事態を十分説明できない。

 キリンとサントリーの人間だって馬鹿ではないのだ。頭のいい幹部社員はたくさんいる。とくに、今回の合併に関しては、相当優秀な人たちが知識を駆使したはずだ。もちろん、両社の社風や組織文化が違っていることなって分かっていたはずだ。それにもかかわらず、なぜ統合を企画し、結局失敗したか。ここが問題だ。

 私の結論はこうだ。まさに、「戦略の不条理」に陥ったのだ。二つの企業の知識人たちの世界観は、クラウゼヴィッツ的な唯物論的一元論だったかもしれない。

 おそらく、二つの企業の知識人たちは物、心、知識(文化・風土)が存在していることは知っていたのだ。しかし、その中で、もっとも価値があり、存在感があるのは、物質であり、それと関係しない心や知識はなんの存在感もないという一元論に立っていた可能性がある。

 このような一元論的な世界観に立つと、物理的世界での統合に成功すれば、それに影響されて心理的世界でも知性的世界でも統合されるだろうという考えにたとりつくことになるのだ。

 しかし、

 私が拙著『戦略の不条理』で説明しているように、物理的世界、心理的世界、知性的世界といった3つの世界は相互に自律的なのだ。3つの世界は同じ方向に動くという保証はまったくないのだ。

 したがって、物理的世界での効率性を求めて二つの企業が合理的に合併し統合しようとしても、心理的世界や知性的世界でも二つの企業が合理的に統合される保証はないのだ。

確かに、キリンとサントリーの社長はいずれも慶大出身でしかも1つ違い。慶応という観念のもとに、知性的世界での交渉・取引コストは低かったし、心理的世界での安心感もあった。

 しかし、基本は物理的世界での統合だ。議論を正確に進めるプロセスで、両社にとって心理的世界と知性的世界での違いがいかに大きいかはっきりしたのではないか。とくに、二社の知性的世界での違いは「慶応」という観念を超えた違いであることが認識されたのではないか。

 一つの世界で合理性を追求して他の世界で不適合となるということ、つまり合理的不適合=「戦略の不条理」に陥ったのだ。 

拙著『戦略の不条理』光文社新書http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334035299/kikuzawakensh-22 

菊澤研宗: 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書 426)

拙著『戦略学』ダイヤモンド社

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 菊澤 研宗: 戦略学―立体的戦略の原理

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