学会でのハプニング
昨年9月の経営学会でのことだ。話はすべて事実である。
学会発表には、基本的に二つの形式がある。(1)一つは大教室で学会参加者を対象として発表する統一論題報告(聴衆は参加者全員)と(2)各個別の教室に分かれて発表する自由論題報告(関心のある人だけが参加)がある。
今回、私は、(1)の統一論題の報告者3人の報告に対するコメンテータの一人として登壇した。3人の報告と2名のコメントが終わると、報告者とコメンテータが壇上に並んで座り、会場の先生方と質疑応答を行う。
私もコメンテータの一人として壇上に座って質疑を待った。
司会者のS先生が、「質疑応答に入る前に、質問する場合には必ずまず自分の所属を述べ、誰に質問したいのかを述べてから質問してください」と注意した。
まず一人目の先生が手を挙げ、司会者に言われた通り、自分の所属大学と誰に質問したいのかを述べて、質問した。対象は、私ではなかった。
次に、T先生が手を挙げた。もちろん、私はT先生のことをよく知っている。T先生はすぐに質問に入ろうとしたところ、すかさず司会者のS先生が「だれですか。名前と所属を言ってください」と注意した。(もちろん、S先生はT先生が誰だか知っている)
T先生はあわてて「**大学のTです」といって、またすぐに質問に入ろうとした。
しかし、司会のS先生は、見逃さずさらに厳しく「誰に対する質問ですか!言ってください」と問い詰めた。
T先生はあわてて「後でいうから、少し待ってくれないか?」と言いながら、だらだらと質問を続けた。その質問の中身は分かりにくい内容だっがが、なんとなく私(菊澤)に質問したいのではないかと、私は直感した。
そこへ、司会のS先生はさらにT先生を追い詰め、「だから誰に質問したいのですか!」と少々怒り気味にT先生に問い詰めた。
T先生は「あと、あとで言うから、もう少し待ってくれ」とドモリナガラ、だらだらと質問をづづけた。
さらに、司会のS先生はT先生を追い詰め、「結局、だれに質問したいのかいってください」と質問を制止しようとした。
追い詰められたT先生は、ついに質問相手を言わなければならなくなった。私は、たぶんT先生は私(菊澤)に質問したいのだろうなと、心の準備をした。
そして、次の瞬間、T先生が質問相手の名前をいった。
「た、た、た、タンザワ(丹沢)さん」(それは、私の先輩の名前ではないか!壇上にはいないぞ!by菊澤の心の声)
そして、瞬時に司会のS先生が、「そんな人はここにはいません!」といって終わった。 私も、意地悪くたぶん私を指名したいんだろうと思いつつも、わざと知らん顔をした。
その瞬間、会場の先生方によってT先生はボケた老人と認識され、会場から笑いが起こった。
私は、T先生に何が起こったのか、すぐにT先生の心理プロセス分析をした。
T先生はおそらく私(菊澤)と丹沢さんを間違えたのだろう。私の名前を思い出すことなく、いつものように安易に手を挙げてしまった。そして、質問しながら、私の名前を思い出そうしていたんだろう。しかし、結局、話しながら、私の名前を思い出せず、司会のS先生に追いこまれた。そして、追いこまれて、とうとう別の先生の名前をいってしまったんだろう。これだ。間違いない!
その日、夜あった懇親会でも、この話で盛り上がった。とくに、若い学者は喜んでいた。
後で、司会のS先生と会ったとき、「本当は菊澤さんに質問したかったんだろうが、名前を間違えるなんて!**な人だ」と呆れていたのは、おもしろかった。学会はおもしろい。
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