知性的世界をめぐる誤解について
拙著『戦略の不条理』は、なんとかまだ売れているようだ。横浜の有隣堂で、2刷があったので、2刷も出てきているようだ。
さて、この本では、ポパーの多元論的世界観を基礎としているのだが、心理的世界と知性的世界の区別が分かりにくいという意見を聞く。その原因の一つは、知性的世界とうネーミングにあるかもしれないと思っている。
実は、ポパーは世界1(物理的)、世界2(心理的)、世界3(理論内容)と述べており、世界3を常に「知性的世界」と積極的に呼んでいるわではない。彼自身は、「世界3」あるいは「第3世界」と呼んでいる。
ポパーの「世界3」を積極的に「知性的世界」と呼んでいるのは、私である。こう呼んでいるのは、この世界3は5感ではなく知性によってその実在あるいは存在を理解できるという意味である。
こういった説明が、ポパーに何度も見いだせるし、ポパーも「知性的世界」といっているときもあるので、私は「世界3」を「知性的世界」と呼んだ。
しかし、多くの人々は文字通り「知性の世界」を「人間の知性(脳)の世界(最近、脳科学が流行っていることもあり)」だと思ってしまい、「心理の世界」と混同してしまうのだろう。
もう一度、定義したいと思います。
●「知性的世界」とは、脳の働きのような知性や脳それ自体の世界ではなく、「人間の知性によってその存在を理解することができるもの」つまり「理論内容」や「技術」や「特許」や「制度」といった実在のことをいう。
「知識的世界」あるいは「言明的世界」といった方が狭いのですが、誤解を避けれたかもしれませんね。
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