JALをめぐる不条理 取引コスト、サンクコストを無視できないのはなぜ?
JALをめぐって揺れている。マスコミの論調では、JALがつぶれてもJALのOBは高い年金を取り続けるのか!という感じだ。無知で馬鹿な人たちだということになる。
しかし、まさにそこに不条理が起こっているのだろう。当事者たちも、おそらくみんなわかっているのだろう。これがばかげていることなど。個別合理性と全体合理性が一致していないのだ。
その原因はいろいろあるだろうが、年金受給者たちが自発的に調整し、一致させるための取引コストがあまりにも高いのであろう。(サンクコストが高いのかもしれない)そこで、「全体効率性のために、そんな調整・取引コストなど無視すればいいじゃん!」というのは簡単なのだが・・・
そうするコストはもっと高いので、結局、調整・取引コストを節約するために、国が法律を変えて強制的に行う可能性が高い。
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しかし、別の側面も見る必要もある。いわゆる公共事業として各地にビジネスにはならない飛行場を作ってしまうと、なんとかしてそこを航空会社に利用してもらう必要がある。
航空会社も損得を計算するので、本来ならだれもそこに飛行機を飛ばしたくないだろう。しかし、こういった場合、JALは断ることができたのだろうか?断るには取引コストがあまりにも高かったかもしれない。
ここでも不条理が起こっていたのかもしれない。
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あまり理論的ではない人は、安易に簡単に「そんな取引コストを無視すればいいじゃん」といったり、突然、規範的に「このような場合には取引コストは無視すべし」と命令することになる。
同様のことが「サンクコスト」についてもいえる。「サンクコストなど無視すべき、無視しなければならない」と規範的命題を語る人が多い。
しかし、経験的には「取引コスト」や「サンクコスト」を無視している人は少ないのではないかと思う。だからこそ、無視すべきだという規範的命題を持ち込むのだろう。
ではなぜ人間は取引コストやサンクコストを無視しないのか。(取引コストやサンクコストにだまされるのかという言い方でもいいが)
答えは簡単だ。それらを無視することに、コストがかかるからだ。取引コストやサンクコストをタダでは無視できないのだ。そのコストがまた非常に高いので、無視できないわけだ。無視しないで認めた方がラクなのだ。つまり、個別効率性を追求した方が楽なのだ。(ここでは「楽」という言葉をシャレで使っているが、それは辞書によると使い方が間違っているなどどお叱りを受けるかもしれないので、正確にはコストが低くいのだ)まさに、シカゴ学派代表のひとりH・デムゼッツもいうように、「フリーランチはない」。
頭のいい人間ほど、瞬時にこんな計算するのだ。
ではどうすれば、この不条理な状況から抜け出すのか。その答えを以下の二つの著書の文庫版のあとがきや最後の章で示しているのだが・・・・そこも読み取ってもらえるかどうかは、読者に依存するしかありません。
上記のことも理解して、読者にはぜひ拙著『組織は合理的に失敗する』日経ビジネス人文庫を読んでほしいですね。
しかし、amazonでは拙著『戦略の不条理』光文社新書と同様に品切れで3週間から5週間待ちになっていて、早く補充してほしいものです。光文社新書の方は増刷しているので、もうすぐ入荷されると思いますが・・・・・・それでも購入してくれている方いるようで、非常に感謝感激しております。
『組織は合理的に失敗する』
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