「空気」という言葉で逃げるべきではない
お盆が近づくと、TVでは戦争特集が流れる。NHKでは特別番組として海軍の反省会が分析されている。
この番組に関して、いろんな人々がいろんな感想をもつだろう。私の場合には、海軍に少し失望するものとなってしまった。戦後、「サイレント・ネイビー」という名の下に、海軍は陸軍よりもカッコイイ感じがしていた。そして、偉い人ほど黙るものだと思っていたし、戦後、べらべらしゃべる人ほど安易だとも思っていた。
NHKが流した海軍反省会でのテープで話しているのは、海軍でもある程度の地位のあった人々だ。その会話でやたらに出てくる言葉があった。それは、山本七平が使った「空気」という言葉だ。
この「空気」という言葉は、見えいないものでも存在しているのだということを表すのに、あるいは言葉では表せないものを表せるメタファーとして、非常に印象的な言葉であった。
しかし、今回の海軍の反省会て飛び交ったこの「空気」という言葉の意味が違うように思えた。
「海軍にはそういった空気があった」「そういった空気では本心がいえないのだ」「そういった空気があったので、それはだめだといえなかった」・・・・・
結局、すべて「空気」のせいにしているのだ。私は、そうではないだろうと言いたくなった。
あなたちのような頭脳明晰な人たちが計算していないわけがないのだ。コスト・ベネフィットを計算し、マイナスになるから、話さなかっただけ。空気なんかではない。合理的計算の結果であり、コスト・ベネフィットを計算した結果、その結果、損するから、反対しなかったし、声をあげなかったのであって、決して「空気」のせいではない。
私もある会議で経験したことがある。「空気」ではない。結局、自分がかわいいのだ。ここで反対すると、自分が損するし、いやな思いがするし、そのコストを無視してまで発言する「勇気」がないのだ。他律的に行動した方が楽なのだ。自由意思にもとづいて反対し、正論を語り、自律的に反対する勇気がないのだ。結局。
どうか、みなさん「空気」のせいにしないでください。
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私はこの番組を見て,400時間を生で聞いてみたくなりました。
今回は海軍にだけスポットを当てたということなのでしょうが,普通に見た人は,陸軍より海軍がかなりの悪だった,という印象を持ったのではないかと懸念されます。
当時の会議や人のパワーバランスを「空気」にとどめずに分析すれば,非常に多くの知見が得られ,且つ重厚な題材なためインパクトが大きいものと思いました。
投稿: 吉田 | 2009年8月21日 (金) 午前 08時21分