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2009年5月 8日 (金)

知識創造とイノベーションの同等性とその帰結

 ここ数年、「知識創造」と「イノベーション」という言葉が流行りだ。私は、これまで科学哲学を学んできて、変な偏見をもっていたので、気付かなかったが、これらは以下の意味で同じものであることがわかった。驚いた。

1イノベーション

 イノベーションというと、シュムペーターだ。シュムペーターの考えるイノベーションとは、以下の2点のことだ。

(S1)既存の知識を新たに結合すること、それゆえ無から突然有を生み出すことではない。あくまでも新結合ということ。この点は重要だ。よく新しいアイディアがでると、それは切り貼りだとかいう人もいるが、大抵はそういった切り貼りが偶然成功したときには、イノベーションが起こるのだ。(Neue Kombination: ノイエ コムビナチオン:新結合)

(S2)シュムペーターのイノベーションのもう一つの条件は、それを実行することだ。この点を忘れてはならない。新しい結合がでて、それが世間に認められると、あんなことは自分がずっと前から言っていたという人がいるが、実行しない人にはその名誉にはあずかれないのだ。 (Druchsetzung:デュルヒゼッツンク:実行)

2 知識

科学哲学でいう知識の創造も実は新結合なのだ。カントによると、命題には二種類ある。

「Aならばaである」=「白布は白い」=分析命題=トートロジー=数学・論理学

「Aならばbである」=「朝カラスが鳴くと、必ず人が死ぬ」=総合命題=経験科学

前者は述語aが主語Aから引き出されたものなので、新結合ではない。それは経験的にテストする前から正しい命題である。それは主語を分析したのであり、それは繰り返して主語をより明確にしただけのトートロジーである。これは知識創造ではない。

後者は主語と述語が全く関係ないのに、結合するという意味で新結合であり、知識を拡張するという意味で綜合命題なのだ。その妥当性は、実際にあるいは経験的に確かめないとわからない。これが経験科学的知識である。その特徴は、シュムペーターと同じであることがわかる。

(K1)関係ない現象を新しく結合していること。

(K2)その妥当性を実際に経験によってテストすること。

3 同等性

以上のことから、以下が成り立つと思う。

(k1)=(S1)

(K2)=(S2)

もしこの関係が正しいならば、以下の結論に至る。

イノベーションに至る真なる論理あるいは新なる経験理論はない。

by K.R.Popper

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コメント


菊澤先生

とても興味深く読ませていただきました。

>イノベーションに至る真なる論理あるいは新なる経験理論はない。

この言葉を私なりに以下のように理解いたしました。
「・・あるのは、結合を生み出し実行する工夫のみ。」

その工夫とは、「場」を創る工夫かも知れません。
あるいは、その工夫はモデル化できるかも知れませんが、同じ結果を100%保障するものではないと思います。

もし、私がコンサルタントであるとしたら、クライアントに提供できるのは、そのモデルであり、必ず結果を導ける論理や経験的理論ではないということを感じました。

菊澤先生

ご無沙汰しております。
販売革新の竹下です。
いつも楽しく読ませていただいております。

イノベーションの条件に「実行」があるとは恥ずかしながら初耳でした。

最近、いろんな面で実行の大切さを感じています。

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