定額給付金をめぐる組織の不条理
定額給付金をめぐって、ますます混迷した状況になってきた。もともと、この政策をめぐって、取引コスト理論的には、いくぶん疑問点があった。
(1)給付金それ自体が生み出す社会的メリットとそれを実現し配分するために必要な交渉取引コストがどちらが大きいのかとう点で、もととも疑問であり、問題であった。
しかし、そのうち、この問題を解決せずに、この政策が多大な取引コストをかけながら(交渉取引に時間をかけながら)も実現可能性が徐々に高まってきたとき、先日、小泉首相がこの政策に否定的な発言をした。
このとき、不条理が発生した。
(2)この政策を実現するものと思って、すでに多くの自治体や企業が多大な投資しており(たとえば、そういう部署を設置したり、1万2千円の商品開発したり)、ここでもしこの政策を中止すると、その投資は回収できないし、この政策をめぐる多くの利害関係者を説得する必要に迫られる。
こういったさまざまなコストや交渉取引コストの大きさを考えたら、たとえこの政策がもはや非効率的で効果のないものだとわかっていても、もうあと戻りできないのでは・・・・・
何かガダルカナル戦に似てきた感じだ。
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菊澤先生
取引コストというフレームワークをあててみると、いろいろなことが説明できますね。
テレビでみたところでは、野田聖子氏は「異議を唱える時はもっと前にあったのに...」、桝添要一氏は「Too late...」と発言していました。
いずれの方も言外に、非効率なことはわかっていること匂わせつつも、中止することで発生する膨大な取引コストを考えると突き進むしかないと言っているようです。
投稿: 城取一成 | 2009年2月16日 (月) 午後 02時03分
城取様
菊澤です。
コメントありがとうございます。
私の取引コスト理論による説明を理解していただき、ありがとうございます。
本当に、いまの定額給付金政策は、ガダルカナル戦のように、それ自体が非効率的であっても、いま中止すると、巨大な取引コストが発生するので、他律的に後戻りできないという不条理な状況になりそうですね。
投稿: 菊澤 | 2009年2月16日 (月) 午後 03時15分