やはりカントはおもしろい
冬休みに入ったが、なかなか自分の時間がとれない。とにかく、いろんなお願いがやってきて、その対応で忙しい。
書くべき論文がたくさんあり、どれから手をつけるべきか。その前に、年賀状を出す必要もある。部屋も掃除して、とにかくいらない紙類を処理しなければならない。
ふと、カントの解説書があったので、ぱらぱらと見ていたら、面白い。やはりカントは面白い。
最近は、簡単に読める本が流行っているが、私にとっては「感性」「悟性」「理性」「超越論的感性論」「超越論的弁証論」「純粋理性の誤謬推理」「実践理性の二律背反」「仮言命法」「定言命法」といった言葉が踊る哲学的世界がほんとうは好きだ。
私のことを、最近、知った人たちは、私のことを新制度派経済学の専門家、組織の経済学の研究者だと思っているかもしれない。哲学などには縁のない、経験科学を追求する人間だと思っている人がたぶん多いと思う。
しかし、私は大学の学部時代そして大学院ではもっぱらイマニエル・カント、マックス・ヴェーバー、カール・ライムント・ポパーを研究してきたのであり、経営学などほとんど勉強したことはなかったのだ。
私の先生も、経営学なんて自分でできるから、そんなものをしなくていい。いまは、哲学をやればいいといつも私にいってくれた。私は、そんな先生が好きだったので、何の迷いもなく哲学をした。
その結果として、私が最初に書いた論文は、マックス・ヴェーバーの価値自由原理の再解釈に関するものであり、次は自由をめぐるカントとニックリッシュの関係についての論文であり、さらにその後はバーナードとカントとの関係についての論文であった。
私が最初に論文を発表したときには、日吉の哲学の教授である箕輪先生が聞きにきてくれた。本当にうれしかった。
しかし、その後は、簡単な数学を使った論文をいくつか書きはじめ、そしてやがて新制度派経済学へと移行し、最近では行動経済学的な論文も書くようになった。なぜか。
私が感じたのは、30才の若僧が哲学を語っても、だれも聞いてくれないということだ。私の先生が亡くなった後は、特に無防備な若僧の話など・・・・
しかし、いまや私も少し歳をとり、少しだが、私の主張に注目してくれる人もいる。今回、学会で初めて私がカント主義者であることを質疑に応答するたびに主張することができた。満足している。今後も、若返ってどんどん哲学的議論を展開していきたいものだ。
新制度派経済学、組織の経済学、『組織の不条理』などの本は、カント的にいえば、認識論、純粋理性批判に対応する世界だ。これに対して、拙著『戦略学』(ダイヤモンド社)は、カント的にいえば、実践理性批判に対応する本なのだ。この本の内容を紹介するのは、何かとても楽しい。
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