哲学の復権
拙著『戦略学』(ダイヤモンド社)を出版してから、いろんな評価をいただいているが、やはり新しい多元的世界観にもとづいて既存の戦略論を整理して見せた点に、多くの人たちは驚いているようだ。
経営学や経済学の狭い領域だけで、近視眼的に勉強することには限界がある。米国の研究者は、全く異なる学問領域からいろんな考えや概念を自分の研究領域に持ち込んで結合し、新結合という学問的イノベーションを起こすことが多い。
今回、私は哲学の世界の議論を戦略論に持ち込んだ。かつて野中先生がマイケル・ポランニーの暗黙知の議論を経営学に持ち込み、いまアリストテレスのフロネシスの概念を持ちこもうとしている。
今回、戦略論の世界に持ち込んだ多元的世界観、特に知性的世界(世界3)に関する議論はまだまだ不完全である。それは、プラントのイディア論やヘーゲルの客観的精神とどこが違うのか。戦後、日本軍の精神主義は否定されたが、それは正しかったのか。戦後の日本企業には戦略がなかったのか。などなど・・・・・・・・・・
いろんな疑問を抱きながら、いま、わずかな時間を割いて、プラトンやヘーゲルなどについて本を読んで、再確認を行っている。文芸春秋のスペシャル季刊夏号なども面白い。ついつい右よりの気分になってしまう。
いずれにせよ。いま、再確認しているのは、やっぱり、哲学は面白いということだ。
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講談社現代新書の「理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性」(高橋 昌一郎/著)と先生の「戦略学」を併読していました。前者では、なんだすべてに限界があるのだと思いながら、「戦略学」でその限界の中で「いかにして生き残るか」が重要なのだと思い直しました。生き抜くための知恵を総動員しながら先生の「CGS」をもっと勉強したいと思います。
投稿: fuji | 2008年8月26日 (火) 午前 12時13分
fuji様
菊澤です。
コメントありがとうございます。
講談社現代新書「理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性」と拙著『戦略学』は相性がとてもよさそうですね。fuji様は、私のブログと長くお付き合いされているので、私の意図を理解されているのではないかと思います。
不完全な人間には、勝利の方程式など知ることはできません(たとえそれが存在していたとしても)。だから戦略が必要なのです。
しかし、何もしなければ生存できません。では生存するために、不完全な人間は何かできるのか。
不完全な人間が、人間としてできることを全部やったら、生存すること、成功することは確約できませんが、それを望んでもいいですよね。神様
これが、拙著『戦略学』の本質です。そのネタはカントの批判主義哲学です。
投稿: 菊澤 | 2008年8月26日 (火) 午後 05時23分