ブログを使った間接アプローチ戦略
「ダイヤモンド・オンライン」で、拙著『戦略学』についての要約を書きましたので、関心のある方は、一度読んでみてください。
ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/series/diabooks/10029/
しかし、私の記事より、もっと面白いのは勝間さんと子飼さんの対談だ。二人とも、本当にすごい。お二人のブログには、なんと月間160万、ユニークで100万のアクセスがあるとのことだ。
しかも、子飼さんの場合、130人書評を読むと1人が書籍を購入し、勝間さんの場合には、30人に1人が書籍購入とのことだ。すごい威力だ。これが、私が指摘している世界3つまり知性的世界を利用した間接アプローチ戦略の一種なのだ。
知性的世界は、心の状態から自律的で、ますます成長する。そして、それは人間の心理や行動に反作用し、人間も成長する。
私の場合、ブログに1日数十人しかアクセスがないので、世界3を利用した間接アプローチ戦略の効果がほとんどない。残念。
« 経営史学会の巨匠・巨人・大家 | トップページ | ブログのリニューアル »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 行き着くところはゲシュタルト心理学(2021.01.19)
- 日本政府、組織の不条理(2021.01.05)
- リスクと不確実性 どちらも解けない。(2020.08.18)
- 謹賀新年 最近の本の傾向(2020.01.04)
- サガン鳥栖について(2019.02.24)
大変失礼いたしました。
コメントに名前を記しておりませんでしたので、再度コメントを送信いたします。
Sato
「知性的世界は、心の状態から自律的で、ますます成長する。そして、それは人間の心理や行動に反作用し、人間も成長する。」
この仮説は非常に興味深く、今後の先生の学説の大きな特徴となられるものと想像しています。
そして、ここが、近年における先生ご自身にとても大きな発見であったのだろうと想像しております。
心理的世界である第2世界と、知性的世界である第3の世界の違い。この部分が私もとても重要だと思いつつも、まだ迷いがある部分です。
先生ご自身もHBRにて心理会計について記されていますが、取引コストを考慮に入れてプロスペクト理論を用いて旧日本軍の指揮官の心理を分析されています。
私は、この分析に大変感銘を受け、行動経済学の分野を勉強してみましたが、心理的側面のみの判断とは、組織の戦略の決定に至るには、あまりにも独裁的な決定となってしまうのではないかと考えていました。
すなわち、現在の企業、特に大勢の人がいる大企業においては、リーダーの心理的な影響による決定のみで組織が大きく動くことには限界があるのではないかと思っていたのです。大勢の人が動くには、それなりの説得力が必要です。
しかし、今回の『戦略学』における知性的な世界として「取引コスト」を扱うと、心理的なものだけではなく、戦略に至る過程における思考の要素が多くの人の知性を通じて自己成長し、場合によっては当初の意図を超えた、もしくは必ずしも合理的とは言えない結果に、あたかも合理的に導かれてしまうということも説明がつくのではないかと感じます。
もちろん、思いもかけない良い結果へ導かれることもあるはずです。Googleなどの企業も、ここまでの成長を事前に全ての戦略を考えて予定した通りの結果として発展したとは考えにくいからです。
多くの人の知性を通じて自己成長するとうところが、限定合理的な人々の知識や思考過程を反映しているのではないかと思うのですが・・・。
長くなりましたが、限定合理性に基づくこの第2世界と第3世界における間接アプローチの重要性は今後きっとさらに注目されることと思います。
ゼミの学生さんの事例研究に加え、より深くこの第3世界の特徴についても若きゼミ生の方々に議論していただきたいなと思います。
投稿: Sato | 2008年8月31日 (日) 午前 01時44分
Sato様
菊澤です。コメントありがとうございます。
驚きました。Satoさんは本当に頭の良い人なんですね。恐るべしです。(その他にも、私のこのつまらないブログを読んでくださっている知的な方々に感謝します。)
Satoさんは、私のHBRの取引コストとプロスペクト理論の論文もみていたのですね。驚きました。だから、今回の拙著『戦略学』も何か予感できたでしょうね。
実は、そこからさらに、私の研究は以下の二つの方向に進んでいます。
(1)経験科学的研究
(2)哲学的研究
このうち、(1)は近々学術雑誌『三田商学研究』に発表する予定で、(2)の研究はまだ不完全ですが、徐々に見えはじめています。まだ、公表するには不十分ですが、その一部を遊びで、(まだ隠したいという気持ちもあって)、このブログで「知性的世界は、心の状態から自律的で、ますます成長する。そして、それは人間の心理や行動に反作用し、人間も成長する。」という短い文で、示唆してみました。
それを、Satoさんは見事に読みとっているので、「すごい」というか、「恐るべし」というか、私も嬉しくなってしまいますね。
ブログで、こちらの研究の話をさらに詳しくするかもしれませんので、よろしくお願いします。
投稿: 菊澤 | 2008年8月31日 (日) 午前 10時41分
菊澤先生
いえいえ、とんでもございません。
私は、いわゆる現場におきまして、そこに生じている疑問を菊澤先生の言葉をお借りして俯瞰し、より良い状況を模索している者です。
私の疑問点はシンプルです。
「なぜ、スター選手のような優秀な人が集まっても勝てず、逆に弱小チームが優勝することもあるのだろうか。」
私の会社には、本当に優秀な方々がたくさんおります。それでも、ビジネス的な意思決定には苦労されています。
「これだけ優秀な人材がいれば、間違うことなどありえないのでは? それが、なぜみんなで間違った方向に行ってしまい、後で後悔してしまうのだろうか・・・。」
優秀な方々が、心理的、感情的な意思決定で突き進んでしまうとは考えにくいのですが、知性的にメリットやデメリットをよく考えた結果の意思決定が、時に誤った方向に合理的に導かれてしまうと考えれば納得がいきます。
例えば、組織の業績というものは、「個人個人がやる気や根性を出せば良くなる!」と言うものではないことは誰もが納得されると思います。そのことは、きっと深く研究すれば、心理面で組織というものを扱いきれるものではないことも証明されることと思います。
それでは、この「やる気や根性に変わる言葉は何か?」と考えますと、なかなか思いつかないものです。
ついつい、やる気論に負けて、非合理的なことを引き伸ばしてしまうものです。
しかし、今回先生の「知性的世界」という視点から、私は大きなヒントを得たような気がいたしております。
野中先生のご功績により、「知」についての研究が盛んとなり、その重要性を意識する方も多くおられます。
そして、菊澤先生により戦略論における知性的世界という分類をしていただけたことから、この知性面についてより深い議論が発展するのではないかと期待しています。
私は、この「知」には悪い面というものが隠されているのではないかと思うのです。
言わば、「知のダークサイド」(笑)のようなものです。
そして、それが自己成長し、フィードバックにより影響を受けるものであるとしたら、とても困りものです・・・。
「知」の良い面や悪い面も見えてくることにより、「不条理」の起こる原因も見えてくるのではないかと思います。
組織文化や組織風土という言葉が言われておりますが、これらの言葉は誰もその正体を見た人はいない「やっかいな物」として、学者先生の間でさえ嫌われる傾向があるものと思います。
しかし、私は、やはり、組織文化や組織風土というものを感じずには居られない場面を見ることがあります。
そして、それが、その組織の行く先や行動へ大きく影響しているものと思います。
「リーダーシップ」でさへ、その組織の風土によってスタイルが変わるものと思います。
この、知性的世界の分析に、このような組織文化や組織風土の正体も隠れているのではないかと・・・、そのような期待を持って私も勉強してまいりたいと思っております。
戦略論の新たなカテゴライズがミンツバーグにより行われたと聞いたことがありますが、菊澤先生のもたらしている新たな提唱も、そのような戦略論における大きなポイントとして世界の方々に認識されることを期待しております。
先生の哲学面での研究についての発表も、楽しみにしております。
投稿: Sato | 2008年8月31日 (日) 午後 08時17分