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2008年5月19日 (月)

日本フードサービス学会でー普通人としてのCSR

 5月10日、青山学院大学で、日本フードサービス学会でご招待されて、コーポレート・ガバナンスのお話を少しさせていただいた。私とペアを組んでくださったのは、マクドナルド社の社長であった。

http://www.jfgakkai.jp/

 フードサービス学会はフードサービス協会と結びついているので、普通の学会とは異なり、すべてがそろっていて驚いた。何がそろっているのか?休憩室には、上島コーヒーあり、ミツカン酢の健康ドリンクあり、・・・・・・とにかく素晴らしいのひとことだ。

 さて、今回もそうなのだが、とにかく最近はどのこの学会でもCSR「企業の社会的責任」ばやりだ。そして、経営学関連の学会では、大抵、CSRと企業の業績の関係が議論され、結論として「CSRに力を注げば、業績を上がる」という甘い認識で思わるものだ。

 そして、このような議論を聞いて、大小の会社の担当者も納得し、気分よく、帰宅できるというすじがきだ。しかも、こういった風潮に乗っかって何かメリットをえようとするあやしい学者も多い。

 さて、CSR問題に対する私の考えは、それほど体系的に整理されているわけではないが、少なくとも以下の三つの立場にわけて、考えている。

(1)一人の普通人としての立場からの見解

(2)経営哲学者的立場からの見解

(3)経験科学的経営学者的立場からの見解

本日は、(1)の立場での意見を書かせていただく。

 上で述べたように、今日、多くの企業がCSR活動に関心をもっており、その活動をすれば業績があがると思っているように思える。また、リスクを避けることができるリスクマネジメントだと思っているかもしれない。つまり、もしかのための保険だ。だれでも保険に入っておくということだ。

 しかし、私は、一般人として言いたいのは、「社会的責任」を負えるような会社は選ばれた会社だ、ということだ。どんな会社も社会的責任など負いたくても負えないのだ。そんな資格はないと言いたい。

 では、選ばれた会社とはどんな会社か。その答えは、簡単だ。つぶれたら、多くの人たちが涙を流して悲しむ会社だ。従業員が泣き、消費者が泣く会社だ。ステークホルダーズが泣く会社だ。

 そんな会社はどれだけあるだろうか。ほとんどの会社はつぶれても一部の人々は泣くが、多くの消費者はどうとも思わないだろう。むしろ、いつの間に倒産したのかとか、あんな会社なくてもよかったとか、当然だとか言われる会社が意外に多いかもしれないのだ。

 そういった観点からすると、「不二家」は社会的責任を負っていることが今回の事件ではっきりわかったと思う。たくさんの従業員、フランチャイジーが泣き、たくさんの消費者が泣いてくれて、生き残ったのだ。それはつぶれてはいけないのだ。社会的責任を背負っているのだ。同じように、マクドナルド社、吉野家、赤福にはファンがたくさんいるのだ。

 では、「吉兆」はどうだろうか。主観的な観点からすると、どれだけ泣く人がいるだろうか。

 こういった観点に立つと、だれでもCSRなんて口にするなあ~、まだ10年早いぞ!と言いたくなる会社もある。

以上が、(1)の立場にたった一般人としての私の意見である。 

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コメント

初めてコメントさせていただきます。
「企業の社会的責任」を日本人が守れるのでしょうか。殆どの日本人が、個人の良心より組織や社会のルールを重んじ、秩序を維持することを信仰しているとしか思えない。薬害に対する役人の対応から、三菱自動車や赤福の従業員の対応まで、組織に従えば個人に責任が及ばない様な考えが蔓延る。戦争に多くの犠牲を払っても何も学べない日本人は今後もこのままなんでしょうね。「企業の社会的責任」も会社のルールを作ってそれを無責任に遂行するだけでしょう。(付ける場所を間違えました。不慣れですみません。)

abさんへ
菊澤です。

コメントありがとうございます。
日本人に対して、なかなか厳しいご意見ですね。私は、まだわずかな望みなもっているのですが・・・

はい、非常に悲観的です。
現代の若者の7、8割以上が
個人の不条理現象の認識や判断より
社会や組織の不条理なルールを守ることを
理性で道徳的だと考えているようです。
年配の方は更に高い率と思います。
命令違反など考えも及ばないでしょう。
しかし、
先生の著作 
命令違反が組織を伸ばす
組織の不条理
を読み、闇に光を見た思いです。
先生のご活躍に望みを託してます。

ab様

菊澤です。
とてもありがたいコメント、
感謝しております。

次の著作も、ご期待にこたえられる
ように頑張りたいと思いますので、
どうかよろしくお願いいたします。

愚痴を書きます。
申し訳ありません。
昨日、若者に言われました。
「私(若者)の個人的価値観が入り込む余地が有りますか!無い!」
多くの日本人が自分の価値観で判断をすることを悪いこと考えているようです。
KY(空気読め)も此処から来るのでしょうか。
やはり、
「良い命令違反」は
遠い先の話に思えました。
我がまま言わない高学歴に多いと思います。

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