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2007年4月11日 (水)

経営学の学問的構造について、経営学入門(1)

 これから、ときどき経営学という学問について、考えてみたい。

まず、本日は、経営学という学問の体系について考えてみたい。

 私の考えでは、最近の日本の経営学の入門書をみていると、経営学という学問の体系性が非常に分かりにくくなっているように思われる。これは、経営学を学ぶ人にとって不幸なことだ。

 これは私の偏見かもしれないが、最近の経営学の教科書は「組織論」「戦略論」に傾きすぎという印象だ。数学が嫌いな文系の学問として、行き着いた経営学の姿かもしれない。

 そして、もっと恐ろしいことに、この組織論や戦略論中心の経営学が米国流の経営学だと思っている人がいることだ。これは、間違いだ。このようなことを、米国で勉強したければ、社会学部にいかなければならない。

 さて、私が考える経営学の体系は、二つの柱からなっている。

(1)企業経営の人間に関連する分野=経営戦略論、経営組織論、人事労務論、マーケティング

(2)企業経営の価値に関する分野=企業論、企業形態論、会計学、企業ファイナス

なぜこのように区別するのかというと、企業は基本的にこのような二つの側面をもっているからである。

たとえば、ある人に「この企業は大きいと思いますか」という質問をしたとしよう。ある人は、「その企業は従業員の人数が多いので、大きいと思う」という人は、組織論的観点から、企業を見ているのである。そして、従業員の配分の仕方を研究するのが、「組織形態論」である。

別の人は「その企業は資本金が少ないので、小さいと思う」というかもしれない。その人は、企業経営の価値の観点から、企業を見ているのである。そして、どのように資金を集めるか、その仕方、形態(株式会社か合名、合資か)を研究するのか「企業形態論」なのだ。

●ときどき「組織形態論」と「企業形態論」を同じだとする学生がいるが、まったくの誤解だ。

同じ対象をみているにもかかわらず、企業は基本的に二つの側面があると見ていいだろう。

問題は、これら二つの側面が必ずしも一致しないことだ。ある企業は、従業員は多いが、資本金小さいかもしれない。逆に、別の企業は、従業員は少ないが、資本金は大きいかもしれない。

さらに、問題なのは、(1)の側面で、従業員にインタヴューして「満足している」と答えていても、(2)の側面で企業が赤字や資金不足だと、経営はうまくいかないのだ。(かつての航空会社)

逆に、(2)の側面で、黒字で資金も豊富であったとしても、(1)の側面で従業員が不満だらけだと、やはりだめな企業経営なのだ。(某***英会話学校)

したがって、これら二つの側面を一致させたり、相互に調整することが経営にとって非常に重要なのだ。だから、(1)だけを経営学とするのは、片手落ちだ。やはり、(2)の側面も経営学として少しは学んでおく必要があるだろう。

以上のように、経営学は二つの柱からなっていると考えていい。日本では経営学を学ぶ数学嫌いの文系学生や数学嫌いな経営学者が多くなったので、日本では(2)の分野が分離されたり、弱くなったのではないか?と思ったりする。

アメリカでは、逆、むしろ(2)こそが金儲けになるので、みんなこちらを中心にTop20,30のビジネス・スクールで学ぶのだ。米国で組織論の講義なんて2,3科目(経営行動論)しかないのだ。(ただしハーバード・ビジネス・スクールだけはケース中心で例外)

その点、日本の公認会計士の「経営学」試験は良くできていて、(1)と(2)をバランスよく出題しているのは、救われる思いだ。

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コメント

先生の経営学入門、ずっと楽しみに待っておりました。
これからも独自の切り口での経営学や経営学の歴史について、語っていただければ、私も指針とすることができると思います。これからも楽しみに拝見いたします。

佐藤様
菊澤です。
コメントありがとうございます。

これからは、ときどきクセのある「経営学入門」について書いてみたいと思いますので、よろしくお願いします。

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