「組織の不条理」への論評に対して
拙著『組織の不条理』ダイヤモンド社に対する論評で多いのは、不条理な現象を分析するまでの分析は非常に切れ味がいいのだが、その解決案はあまりに一般的すぎて具体性がなく、内容がないという意見が多い。(以下のアマゾンを参照。)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447837323X/ref=pd_ecc_rvi_1/503-7958869-4819146
「と書かれていますが、先生はこれについてどう考えていますか」と、ゼミの学生に飲み会で質問された。
「だから、素人は困る」というのが、私の傲慢な答えだ。
解決案の普遍性と個別具体性は、論理学的にトレード・オフの関係にあるのだ。広く一般に妥当することを述べたかったら、個別的ではなく具体性もなくなり、逆に具体性・個別性を求めれば、逆に普遍性はなくなるのだ。
広く一般的なことを語れば、個別事例をイメージできず、即戦的な答えをイメージできない。しかし、個別事例に対する解決案を展開すると、具体的で分かりやすいが、一般的には妥当しないという批判が起る。
一般性を棄てて、個別事例に対する明確で具体的な解決案を展開するのが、コンサルタントで、彼らに仕事の余地を与え、品よく一般的な議論でとどめるのが学者なのだ。
「私はコンサルタントではなく、学者なのだ」と、私は頑固に言い張りたい。しかし、これらの批判は、まんざら間違いでもないのだ。K.R.ポパーの科学哲学を知っている人なら、私の本当の弱点がきっと分かるはず。
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菊澤先生
「不条理な現象を分析するまでの分析は非常に切れ味がいいのだが、その解決案はあまりに一般的すぎて具体性がなく・・・」
上記の意見について、私は、「反証可能性」ということで区別されるのではないかと思います。
「不条理な現象を分析するまで・・・」この切れ味が良い部分は、逆に他の学説によって反証され得る可能性をも持っているのではないかと思うのです。ポパーの言葉を借りますと、ゆえに科学的であるとも言えると思います。
それに比べますと、後半の「その解決策は・・」は、反証される可能性という点においてはいかがでしょうか。
ビジネスの世界でも、きっと企業の抱える問題に対する解決策を最終的に決めるのは、コンサルタント等からの「アドバイス」を参考とした経営者等責任を持つ当事者であると思います。
アドバイスを受けて行った決断により導かれた結果を検証する際には、それに伴う様々な分析は反証可能性を持つものとなるかもしれません。しかし、アドバイスそのものには、反証可能性はないものと思われます。
先生が科学的に分析した結果という"議論の土俵"を揃え、そのアドバイスも参考としながら、不条理を防ぐための解決策を決めるのは、私達自身であると考えます。
投稿: 佐藤 | 2007年9月 3日 (月) 午前 01時18分
だいぶ以前の記事へコメントを書いてしまい失礼致しました。この記事が一番上にあったので、新しく書かれたものと勘違いしておりました。
広告が最新のコメントと更新されたせいですね。
大変失礼致しました。
投稿: 佐藤 | 2007年9月 3日 (月) 午前 01時52分