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2006年4月23日 (日)

菊澤研宗「組織の不条理」 ダイヤモンド社

47837323

私の本が、以下の本に取り上げられていることを教えていただきました。関心のある方は、どこに私の本が引用してあるのかを探してみてください。

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(1)「会計戦略」の発想法
木村 剛 (著) 単行本 (2003/07/02) 日本実業出版社

(2)心理戦の勝者―歴史が教える65の絶対法則
内藤 誼人 (著), 伊東 明 (著) (2001/02) 講談社

(3)MBA100人が選んだベスト経営書
東洋経済新報社 (編集)(2001/02) 東洋経済新報社

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本書は、組織の経済学理論にもとづいて旧日本軍の不条理な行動を分析した書です。本書は、軍事の歴史を経営・経済学理論で分析するという点で、従来の正統派の歴史家から異端視されています。しかし、その斬新さに魅力を感じてくださる方も多く、勇気づけられています。

 また、本書は、あの不朽の名著「失敗の本質」と逆の主張をしている点でも、注目して頂いています。これまでの多くの軍事史家は、日本軍が非合理であったために失敗したとしていますが、本書では日本軍が合理的に失敗したことを理論的に説明しています。とくに、本書では「ガダルカナル戦での日本軍の失敗」と「インパール作戦での日本軍の失敗」を分析しております。

 日本軍と同じ様な不条理な現象が、実は現代の日本企業にも起こっているように思います。企業人は、不正であることを知りつつ、不正を合理的に行っているのであり、非効率であることを知りつつ非効率な行動を合理的に行っているのではないかと思います。

 一度、本書を読んで、感想でも頂ければありがたいと思います。以下、プロローグを紹介します。

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  プロローグ―不条理な日本陸軍から何を学ぶか―

 本書のねらい 
大東亜戦争における日本陸軍の行動は不条理に満ちている。本書は、この不条理な日本軍の戦闘行動に注目し、なぜ日本軍が不条理な行動に陥ったのかを問うものである。たとえば、ガダルカナル戦では、近代兵器を装備した米軍に対して、日本軍は銃剣をもって肉弾突撃する白兵突撃作戦を一度ではなく三度にわたって繰り広げた。そして、当然、日本軍は全滅した。なぜ日本軍はこのような不条理な白兵突撃作戦を三回にわたって繰り広げたのか。また、インパール作戦では、前線で戦う兵士に武器や食料を継続的に補給できないために大量の兵士が無駄死することがわかっていた。しかし、この作戦は実行され、必然的に多くの日本兵が餓えと病気で死んた。なぜこのような作戦を日本軍は実行してしまったのか。
 このような問いに対して、これまで多くの正統派研究者は、日本軍に内在する非合理性を指摘してきた。人間の非合理性がこのような不条理な組織行動に導いたのだということである。しかも、このような不条理な日本軍の行動は、戦場という異常な状況で発生する例外的な行動であり、日常的にはほとんど起こりえない異常な現象とみなされてきた。
 しかし、このような不条理な行動に導く原因は、実は人間の非合理性にあるのではなく、人間の合理性にあるというのが本書を貫く基本的な考えである。しかも、このような不条理な行動は決して非日常的な現象ではなく、条件さえ整えばどんな人間組織も陥る普遍的な現象であり、現在でもそしてまた将来においても発生しうる恐ろしい組織現象なのである。
 たとえば、今日、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故をめぐる組織的隠蔽工作、大和銀行の不正取引をめぐる組織的隠蔽、そして神奈川県警内部の不祥事をめぐる組織的隠蔽などが注目されている。これらはいずれも人間の非合理性が生み出した事件ではない。それらはいずれも隠蔽することが不正であることを知りつつ、意図的に事実を隠蔽しようする「合理的な不正」なのである。
 本書は、このような現代に蔓延する組織の不条理を解明するために、戦争の世紀と呼ばれる二〇世紀末に、改めて大東亜戦争で繰り広げられた日本軍の不条理な組織行動を問い直し、その不条理の背後に人間の合理性があることを明らかにする。しかも、このような不条理な現象は決して戦争に固有の過去の現象ではなく、現代組織にも起ることを明らかにする。さらに、将来、このような不条理な組織行動に陥らないように、不完全なわれわれ人間が何をなしうるのかを明らかにする。これらが本書のねらいである。

 本書のアプローチ
これらの目的を達成するために、本書では、今日、経済学や経営学の分野でよく知られている「新制度派経済学」と呼ばれている最新のアプローチを用いる。この新制度派経済学アプローチは、今日、「組織の経済学」とも呼ばれており、様々な組織行動を分析するために応用されている。とくに、本書では、このアプローチを不条理な組織現象を説明する理論として新しく解釈し直して利用する。
 この新制度派経済学アプローチの特徴は、どんな人間も完全合理的ではなく、限定合理的(bounded Rationality)だとみなす点にある。つまり、すべての人間は限定された情報獲得能力のもとに意図的に合理的にしか行動できないと考える点に、このアプローチの特徴がある。それゆえ、人間が頭の中で考えている世界と現実の世界とは必ずしも一致しないことになる。
 このような限定合理的な世界では、人間の合理性と効率性と倫理性が一致しないような不条理な現象が発生する。つまり、人間が頭の中で合理的だと思って行動したとしても、実際にはその行動は非効率になってしまったり、不正行為になってしまうこともありうる。たとえば、人間は頭の中で合理的に車を運転していると思っていたとしても、事故に巻き込まれ大けがをするかもしれない。また、ある従業員が会社の利益ために合理的に働いたとしても、実際にはその行動は不正で違法なものとみなされるかもしれない。このように、人間の限定合理性を仮定する新制度派経済学アプローチによって、人間組織が合理的に不正を行い、合理的に非効率を追求し、そして合理的に淘汰されるという不条理が説明されることになる。
 本書では、このような理論的アプローチのもとに、大東亜戦争における日本軍の戦闘行動を分析し、日本軍の非効率で不正な行動の背後に人間の合理性が潜んでいたことを明らかにする。そして、また、現代の企業組織や官僚組織にみられる非効率で不正な行動の背後にも人間の合理性が潜んでいることを明らかにする。

      目 次
プロローグ―不条理な日本陸軍から何を学ぶか―

第Ⅰ部 組織の不条理解明に向けて

第1章 組織はどのようにみなされてきたか―経営学と経済学の歴史入門―
  1 経営学は組織をどのようにみなしてきたか
  2 経済学は組織をどのようにみなしてきたか
  3 組織は資源配分制度である
   
第2章 組織の新しい見方―新制度派経済学入門― 
  1 取引コスト理論がもたらす新しい組織の見方
  2 エージェンシー理論がもたらす新しい組織の見方
  3 所有権理論がもたらす新しい組織の見方
 
第3章 組織はなぜ不条理に陥るか
   ―不条理な組織行動を説明する理論―

  1 組織の不条理を説明する取引コスト理論
  2 組織の不条理を説明するエージェンシー理論
  3 組織の不条理を説明する所有権理論
  
第Ⅱ部 組織の不条理と条理の事例
 
第4章 大東亜戦争と日本軍の戦場
  1 日本軍の南方作戦
  2 日本軍勝利への道
  3 日本軍敗退への道

第5章 不条理なガダルカナル戦
    ―なぜ組織は後もどりできなかったのか―
  1 ガダルカナル戦
  2 取引コスト理論と歴史的経路依存性について
  3 なぜ日本軍は白兵戦術を変更できなかったのか

第6章 不条理なインパール作戦
   ―なぜ組織は最悪の作戦を阻止できなかったのか―
  1 インパール作戦
  2 エージェンシー理論について
  3 なぜインパール作戦を阻止できなかったのか
 
第7章 不条理を回避したジャワ軍政
   ―なぜ組織は大量虐殺を回避できたのか―
  1 今村均のジャワ占領地統治 
  2 所有権理論について
  3 なぜジャワ占領地統治は効率的だったのか

第8章  不条理を回避した硫黄島戦と沖縄戦
    ―なぜ組織は大量の無駄死にを回避できたのか―
  1 硫黄島戦と沖縄戦について
  2 組織形態の取引コスト理論分析
  3 なぜ戦争末期の日本陸軍は効率的に組織変革できたのか

第Ⅲ部 組織の不条理を超えて

第9章 組織の本質―軍事組織と企業組織―
  1 組織が不条理に導かれた事例
  2 組織が不条理を回避した事例
  3 組織の本質は限定合理性である

第10章 組織の不条理と条理―進化か淘汰か―
  1 後もどりできない組織現象
  2 組織はなぜ不条理に陥るか
  3 組織はいかにして不条理を回避できるか

第11章 組織の不条理を超えて―不条理と戦う企業戦士たち―
  1 組織の勝利主義がもたらす不条理を超えて
  2 組織の集権主義がもたらす不条理を超えて
  3 組織の全体主義がもたらす不条理を超えて
  4 組織の不条理を超えてー「開かれた組織」に向けてー

エピローグ―不条理な日本陸軍から何を学ぶことができたか―

参考文献

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