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2006年4月23日 (日)

菊澤研宗著「市場と財務の相互作用論」千倉書房

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本書は、私が若いときに書いたドイツ経営学の本です。会計構造をミクロ経済学理論(一般均衡理論)によって分析し、説明しようとする大胆な目的をもった本です。現代風にいうと「会計制度の経済分析」というタイトルがあてはまります。

 古典的なドイツ経営学はほとんど会計学です。シュマーレンバッハ、ワルプ、シュミットの研究を進めているうちに、彼らの会計学が基礎にしている経済世界観が実はミクロ経済学が説明している市場経済学と同じであることに気づき、両者を対応させてみました。

 とくに、本書では、今日、話題になっている時価主義会計の正しさがミクロ経済学によって正当化できることが論証されています。もし関心があったら是非読んでみてください。

 本書は、少し数学的なためかあまり売れず、ほとんどの人が無関心でした。しかし、一部の著名な会計学の先生は関心を示して頂きました。それだけで、意義がありました。
 以下が内容の一部です。

**************************
はじめに

 これまで日本では伝統的に経営学研究は、ドイツとアメリカで展開された学説を深く理解しようとするものでした。しかし、近年の日本の経済的繁栄とともに、もっと実践的で役立つような経営学研究が強く要求されだし、この伝統的な学説研究は一つの限界につきあたっております。
 しかし、他方自然科学の分野では、逆に近年実践的で役立つ応用的工学的研究だけでなく、理論的な基礎研究への要求が高まっております。そして、それは必然的に人々の関心を既存の理論や古典的学説の研究に向けさせるのではないかと思います。
 したがって、これらのことを考えると、学説研究のような基礎研究それ自体が実はナンセンスなのではなく、むしろそれがいくぶん解釈学的な傾向に留まっており、実践的知識の基礎となるような理論への展開に至っていなかったことに問題があったのではないか、と思います。
 本書は、このような経営学説研究の限界を越えて、ドイツ経営経済学上で展開されてきた古典的な学説を、国民経済学上で展開された一般均衡理論によって、かなり大胆に理論的に洗練化しようとしたものです。そして、これによってこれまでほとんど注目されていなかった市場経済と企業内の財務会計との間の関係、およびそれらの間の相互作用メカニズムを明らかにしようとしました。
 このような研究は、わたくしの知るかぎり、いまだ未知の分野であり、それゆえに本書はいろいろな意味でリスキーな研究であると思っております。このリスキーな研究を絶えず激励してくださった一橋大学教授平田光弘先生、そして本書のような研究に出版の機会を与えてくださった一橋大学名誉教授藻利重隆先生に、心からお礼申し上げます。
 さらに、日頃からわたくしの研究に関心を示し、適切な助言を与えてくださった慶應義塾大学の榊原研互助教授、防衛大学校の武藤功講師、国学院大学の土田寿孝助教授、海野潔教授に感謝します。そして、何よりもわたくしを研究者として育ててくださった故慶應義塾大学教授小島三郎先生に、心から感謝したいと思います。
 最後に、本書の完成を望みつつ亡くなられた千倉書房の鈴木敏也さんのご冥福をお祈りするとともに、この本の出版を全面的に引き継いでくださった塚越俊治さんに、心からお礼申し上げたいと思います。
1992年初夏 横須賀にて
菊沢 研宗
 

目次

序言(Introduction)
 

第Ⅰ部 方法論
第1章 批判的合理主義と論理実証主義
序論
第1節 方法論の基本問題
1-1 方法論の定義をめぐる二つの立場:本質主義と唯名論
1-2 方法論的問題の洗練化
1-3 科学方法論上の基本問題
第2節 論理実証主義の解決案と批判的合理主義によるその批判
2-1 論理実証主義の解決葉
2-2 批判的合理主義による論理実証主義批判
(a) 有意味性の基準に対する批判
(b) 帰納法に対する批判
(c) 実証に対する批判
2-3 批判の帰結
第3節 批判的合理主義の解決案
3-1 科学の境界設定基準の問題(P3)に対する解決
3-2 科学的知識の正当化の問題(P3)に対する解決
3-3 科学的知識発生の問題(P1)に対する解決
結語
第2章 批判的合理主義と科学哲学上の論敵
序論
第1節 批判的合理主義と約束主義
1-1 約束主義からの攻撃
1-2 約束主義哲学
1-3 約束主義の限界
第2節 批判的合理主義と科学史からの攻撃
2-1 クーンのパラダイム論とその問題
2-2 ラカトシュの科学的研究プログラムの方法論に内在する矛盾
2-3 二律背反とその解決
第3節 批判的合理主義と知のアナーキズム
3-1 ファイヤアーベントか1らの攻撃
3-2 知のアナーキズム
(α) 理論負荷性と多元論
(β) 理論負荷性と共約不可能性
(γ) 理論選択と自由
3-3 知のアナーキズムの限界
(α) ファイヤアーベントⅠ
(β) ファイヤアーベントⅡ
(γ) ファイヤアーベントの矛盾とその疑似-解決
結語
第3章 批判的合理主義と経営経済学上の論敵
序論
第1節 ウェーバーの価値自由原理をめぐる三つの方法論的価値自由主義
1-1 科学の境界設定基準としてのウェーバーの客観性
1-2 客観性をめぐる三つの価値自由原理としての方法論的規則
1-3 価値自由原理をめぐる三つの方法論的価値自由主義
第2節 伝統的な方法論的価値自由主義批判
2-1 ウェーバー0批判
(a) その伝統的問題性
(b) アルバートによる没価値主義の復権
(c) 方法論的没価値主義批判
2-2 ウェーバー1批判
(a) その伝統的経営経済学方法論との関係
(b) ミュルダール、ハイネン、ディテールの見解
(c) 素朴な方法論的価値自由主義批判
第3節 ウェーバー2すなわち洗練された方法論的価値自由主義
3-1 境界設定基準の修正
3-2 消極的価値自由原理
3-3 積極的価値自由原理
結語
 

第Ⅱ部 理論
第4章 一般均衡理論とドイツ経営経済学
序論:ドイツ経営経済学と市場経済と企業会計
第1節 批判的合理主義によるドイツ経営経済学上の偏見批判
     ―本質主義批判―
第2節 批判的合理主義による会計学上の偏見批判
     ―相対主義批判―
第3節 批判的合理主義による経済学上の偏見批判
     ―約束主義批判―
結語
第5章 一般均衡理論と損益計算論
序論
(a) 現金主義対発生主義
(b) リーガーの私経済学的見解対シュマーレンバッハの共同経済学的見解
(c) ノイマンーシュマーレンバッハ体系展開のためのプログラム
第1節 v.ノイマンの均衡成長モデル
1-1 v.ノイマンの生産経済系の仮定
1-2 v.ノイマンの均衡成長モデル
1-3 v.ノイマンの均衡成長モデルに関する注意
第2節 シュマーレンバッハの理論的基礎の演譯
2-1 シュマーレンバッハの共同経済世界の導出
2-2 シュマーレンバッハの個別企業像の導出
2-3 シュマーレンバッハの共同経済的生産性と個別企業利益の関係
第3節 シュマーレンバッハの動的計算論の演譯
3-1 シュマーレンバッハの動的損益計算シューマの演譯
3-2 シュマーレンバッハの動的貸借対照表シェーマの演譯
3-3 損益計算シェーマと貸借対照表シェーマの相互作用
結語
第6章 一般均衡理論と貸借対照表論
序論
(a) 静態論対動態論
(b) シュマーレンバッハ、ワルプ動的貸借対照表論対ニックリッシュ静的貸借対照表論
(c) ヒックス―ワルプ体系展開のためのプログラム
第1節 新古典派経済学のミクロ的基礎
1-1 消費者行動
1-2 企業行動
第2節 マクロ経済への展開
2-1 実物経済
2-2 貨幣経済
第3節 超ミクロ経済への展開
3-1 ミクロ的基礎とワルプ会計論の基礎
3-2 演譯論としてのワルプの勘定分析
3-3 演譯論としてのワルプの戻し計算と追加計算
(A) 戻し計算のモデル的説明
(B) 追加計算のモデル的説明
3-4 貸借対照表のミクロ経済学的基礎づけ
(a) 静態的機能1について
(b) 動態的機能2について
(c) 動態的機能3について
結語
 

第Ⅲ部 政策
第7章 一般均衡理論とドイツ経営経済政策序
序説
第1節 正確な利益計算をめぐるシュマーレンバッハのジレンマ
第2節 取得原価主義会計政策
2-1 正確な計算問題とマールベルク
2-2 資本維持問題とワルプ
第3節 時価主義会計政策
3-1 資本維持問題とゲルトマッハー
3-2 経済攪乱問題とシュミット
整理
第8章 一般均衡理論とインフレ会計政策
序論
第1節 パティンキン型生産の一般均衡理論の限界
1-1 ミクロ的基礎としての経済人行動のモデル的表式
1-2 パティンキン型生産の一般均衡理論
1-3 貨幣増大による効果と経済連行:パティンキン体系の限界
第2節 シュミット経営経済学の限界
2-1 シュミットの国民経済学的分析
2-2 シュミット経営経済学理論
(α) シュミットの企業観
(β) 価格変動状況下の企業
(γ) 正しい計算および誤った計算がもたらす効果
2-3 シュミット経営経済学の限界
第3節 市場と会計の有機的関係とインフレ会計政策
3-1 経済人と会計人の分子論的見方
3-2 貨幣増加と取得原価主義会計政策の効果
     ―慢性的インフレおよび企業の実体資本減少のメカニズム―
3-3 貨幣増大と時価主義会計政策の効果―限定されたインフレ・メカニズム
結語:インフレ会計政策
第9章 一般均衡理論とインフレ配当政策論
序論
第1節 シュミット経営経済学と仮装利益
第2節 一般均衡理論と仮装利益
2-1 一般均衡理論概説
2-2 パティンキンの実質現金残高効果
2-3 仮装利益とインフレ現象
第3節 MMの配当政策論と仮装利益
3-1 株価
3-2 企業価値と配当政策
3-3 仮装利益と株価
結論:株式市場を含む市場と企業会計の有機的関係とインフレ配当政策
主張(Theses)
参考文献

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