軍隊のケーススタディと不思議な反応
今から5年ほど前に、『組織の不条理ーなぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか。』という本をダイヤモンド社から出版した。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447837323X/ref=pd_ecc_rvi_2/249-0990828-8475548
この本は、新制度派経済学、組織の経済学を用いて、日本軍の不条理な行動を分析する内容となっており、ケースとして「ガダルカナル戦」「インパール作戦」「ジャワ軍政」「硫黄島・沖縄戦」における日本軍の不条理な行動と条理な行動を分析したものだ。
これら日本軍のケースを、これまで防衛大学校の学生や中央大学アカウンティングスクールの社会人学生に対して、ケース・スタディとして講義してきた。また、人事院研修で公務員の方々にも講義した。さらに、1度だけ、立教大学の学部学生にも講義した。
こうした経験の中で、私の常識を反証するようなことが起っている。
私の偏見的常識とは、「このような軍隊の事例を女性は好まない。それゆえ、女性が多いクラスでは、このようなケース・スタディを行うと、嫌われる。だから、避けたほうよい。」というものだ。社会人の女性は人生の荒波にもまれているので、まだこのようなケースに耐えられるかもしれないが、学部の女学生はどうだろうか。
女性がいるクラスでは、できるだけ避けたほうがいい。これが私の現在の心境だ。
しかし、立教大学で1度だけ「ガダルカナル戦」を取引コスト理論で分析する講義をしたとき、別の経験をした。
その講義はいつもと違う雰囲気があり、学生はシラケていたように感じられ、私は完全に失敗したと思った。そして、講義が終わり、前に座っていた男子学生に感想を求めたときも、「すこし時代遅れの感じがした」と遠まわしに・・・。私は二度とこのような軍隊の事例を扱う講義はしないと堅く心に決めた。
ところが、その後の授業評価アンケートをみると、かなり多くの女子学生からあの日本軍のケースには感動したという意見が書かれており、こちらが驚いた。むしろ、もっとやってほしいとの意見もあった。この同じような印象を、実は中央大学のアカンウンティングスクールでも感じた。
また、中央アカウンテングスクール開校のパティーで会ったマッキンゼーの本田桂子さんも、すでに私の『組織の不条理』を読んでいてくれていて、当時、感動したことを覚えている。
さらに、『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レヴュー』の編集担当の榎本佐智子さんも秋山真之に関心をもち、「兵法の戦略学」を企画したという。
これは、偶然なのか。あるいは、私が出くわしている女性がたまたまそうなのか。あるいは、最近の女性の傾向なのか。あるいは、昔からそうなのか。むしろ、男性の方が軍事を敬遠しているように思う。
これはどういうことか。よくわからない。
こういった心境なので、いまだ学部学生に対して、怖くて軍事のケーススタディはできないでいる。
とにかく、わからない。
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